拉致されて47年、間もなく還暦の横田めぐみさん、奪還に残された時間はわずか
(フォトグラファー:橋本 昇) ■ 突如、姿を消した愛娘 1977年11月15日、新潟市に住む一人の少女が忽然と姿を消した。横田めぐみさん、当時13歳。学校の部活帰りに姿を消したのだ。 【写真】北朝鮮当局から「めぐみさんはすでに死亡」と知らされ悲しみに暮れる横田さん夫妻 事故なのか、事件に巻き込まれたのか、両親の悲痛な思いは想像しても胸が痛む。警察は大規模な捜索を行ったが、遺留品の一つも発見されることはなかった。 そして、娘の突然の不在という事実を抱えたまま、横田家の時計は進んでいった。 その間、娘はどこかで生きているのではないか……という一縷の望みを頼りに、父親の滋さんと母親の早紀江さんは必死に情報を探した。そして、少しでも情報があると各地に飛んで行った。 しかし、めぐみさんの消息は依然としてつかめなかった。心の穴が埋まらないままに、5年、10年、と祈ることしかできない時間が過ぎていった。 めぐみさんについての驚くべき情報が横田家に伝えられたのは、失踪から19年が経過した1997年の年明けのことだった。めぐみさんは北朝鮮工作員によって拉致され、海を隔てた北朝鮮で暮らしていた。これは脱北した元工作員の証言から判明したのだが、このニュースには日本中が驚いた。
■ 大韓航空機事件で北朝鮮による拉致の実態の一端が明らかに あの噂はやはり本当だったのか。 噂はかなり以前からあった。私も高校生の時に友人たちと日本海に面した島にキャンプに行ったことがあるが、「気をつけないと北朝鮮にさらわれるぞ」と言われたのを覚えている。1960年代の話だ。 1980年には若いカップルの日本海沿岸での行方不明事件について外国情報機関の関与を疑う新聞記事が出た。名指しこそしないが、ここで言う外国とは北朝鮮のことだろう、と誰もが思った。 それについては参議院で質問もされている。横田さんも「もしかしたら……」と相談に行ったというが、当時は雲をつかむ様な話で情報などは何もない。北朝鮮は国交のない近くて遠い国だ。 その北朝鮮が我々を驚愕させたのは1987年11月に起きた「大韓航空機爆破事件」だった。この事件は北朝鮮の工作員2人が日本人の父と娘だと偽って大韓航空機に搭乗し爆弾を仕掛けてインド洋上で機体を墜落させたというテロ事件だが、工作員が流暢な日本語を話し日本のパスポートで搭乗していたことから、この事件は意外な波紋を広げていく。 生き残った女性工作員は「蜂谷真由美」と名乗っていたが、その供述から本名は「金賢姫」という北朝鮮の工作員であること、そして本国で日本から拉致してきた「李恩恵」という女性に日本人らしさを習っていたことなどが判ってくると、「李恩恵」さん探しが始まると共に北朝鮮による日本人拉致の問題がクローズアップされるようになった。 過去に全国で起きた謎の失踪事件は北朝鮮による拉致かもしれない。マスコミの報道も「李恩恵」をキーワードに熱を帯びてきた。政府も一連の失踪事件は北朝鮮による拉致の疑いが濃厚との認識を示した。