安保分野で「日米一体化」3つのポイント 岸田首相の訪米の意義 誰が大統領や首相になっても維持される枠組み作成
【八木秀次 突破する日本】 岸田文雄首相が国賓待遇で訪米した。今回の訪米は、わが国の国際社会における地位や位置付けという点で、時代を画する大きな意義を持つものだった。これは岸田首相への好悪とは別に評価すべきことだ。 【写真】バイデン米大統領がXに投稿した岸田文雄首相との2ショット写真 10日午前(日本時間同深夜)、ジョー・バイデン米大統領とホワイトハウスで会談し、日米関係をインド太平洋地域を超えた「グローバルなパートナーシップ」と位置付ける共同声明を発表した。 米国では11月に大統領選があり、日本でも内閣支持率低下で首相交代があり得るなか、可能な限り日米の同盟関係を「制度化」する狙いがあったとされる。誰が大統領や首相になっても維持される枠組みをつくったということだ。 米政権高官が、1960年の日米安保条約改定以来の「日米同盟の最大の変化の一つとなる」と指摘する画期的なものだ(朝日新聞11日付)。 安保分野に関する主要ポイントは以下の3つ。 1つは、有事に備えた米軍と自衛隊の部隊運用に関する「指揮統制」の連携強化だ。自衛隊は今年度中に「統合作戦司令部」を新設する。陸海空や宇宙、サイバー部隊を一元的に指揮する司令部のことだ。かつて日本軍は大東亜戦争では、北進論の陸軍と南進論の海軍が「2つの戦争」を戦ったとされる。「台湾有事」など実戦も予想される今日、一元的な指揮は不可欠だ。 現在の在日米軍司令部は、在日米軍基地や部隊管理が主な任務で、有事の作戦指揮権はインド太平洋軍(米ハワイ)が持つ。在日米軍の態勢を変更し、作戦や訓練の権限を持たせ、自衛隊の統合作戦司令部と軍事作戦上の協力をさせる。日本側が独立した指揮権をどう確保するかは課題だが、「日米一体化」が進むということだ。米軍と自衛隊の合算によって抑止力は格段に高まる。 2つ目は、米国と英国、オーストラリアによる安全保障協力の枠組み「AUKUS(オーカス)」と日本が、人工知能(AI)やサイバーなどの先端技術分野で連携することだ。 3つ目は、日米の防衛装備品の開発や生産、維持整備を促進するための定期協議「DICAS(ダイキャス)」を新設することだ。米軍艦艇はこれまで主に米国内で整備をしてきたが、これにより米軍横須賀基地に司令部がある第7艦隊所属の艦艇が、日本国内の日本企業によって整備可能になる。米軍の即応性も高まるが、ここでも「日米一体化」は進む。