Googleに“プラットフォーマーとしての責任”を問う 悪質な「クチコミ」に悩まされる医師ら集団訴訟を提起
医療機関は悪質なクチコミに悩まされている
通常の商店やサービス業とは異なり、保険診療をおこなう医療機関は“顧客"である患者の要望にすべて従うことはできない。 患者の側が薬や治療を要求しても、患者の健康を守るためには断らなければならない場合がある。また、保険にかかる費用の大部分は健康保険から支払われるため、不要な治療は医療費の無駄遣いとして制限されている。 このような事情があるため、医療機関は悪質なクチコミを投稿される頻度が特に高い。さらに、医師や医療従事者には守秘義務があるため、通常の店舗のように経営者がクチコミへの反論を書き込むことも難しい。 また、医療施設の住所や営業時間などが誤って登録された場合、緊急を要する患者に対して取り返しのつかない損害を生じさせるおそれもある。 しかし、施設側がクチコミの削除や情報の修正を求めてもGoole側の対応はきわめて遅く、削除や申請を拒否することも多い。 原告団が行ったアンケート調査によると、調査を受けた45名の施設運営者のうち35名が「不当・不適切と感じるクチコミを投稿されたことはありますか」という質問に「ある」と回答していた。 さらに、最近では悪質なクチコミを投稿した後に、クチコミを削除する対価として金銭を請求する「削除業者」も問題視されている。 「話を聞いてくれない!という口コミがあった翌日に悪い口コミを削除しますという営業のFAXがとどいた。自作自演なのではないかと疑念を持っている。」(アンケート調査結果より)
「表現の自由を守るための訴訟」
訴訟提起後の会見には、自身もクリニックを経営する原告団長も参加。施設にとって都合の悪いクチコミを消すための訴訟ではないと念押ししたのちに、訴訟の意義を語った。 「表現の自由はもっとも重要であり、絶対に守られなければならないと思っている。今回の訴訟は、表現の自由を守るための訴訟。現在のGoogleマップの状態が続けば表現の自由は危うくなってしまう。」 「表現の自由とは、“なにを言ってもいい”ということとは違う。現在のような状況が続けば、人々は“自由にものを言える状況ってよくないのではないか”と思い、自由に発言することはデメリットやマイナスだと感じるようになるのではないか。」 「医療者側は一方的なサンドバッグとなっており、誤った情報が拡散しても委縮して、自由にものが言えない状況になっている。これは言論にとって不健全だ」(原告団長) 2021年、Googleはサービス名を「Googleマイビジネス」から「Googleビジネスプロフィール」に変更。これに伴い、人種差別などのヘイトスピーチを含むクチコミが禁止・制限されるようになった。 しかし、原告団長によると「メス豚」といった明らかな誹謗中傷すら、報告しても削除されないという。日本語圏ではない担当者が翻訳を通じて機械的に確認しているため、誹謗中傷が含まれている文言についても適切に判断できないのではないか、と原告団長は指摘した。
弁護士JP編集部