錦織圭、途中棄権も「収穫はすごくあった」赤土での戦いに手応え…降雨で30時間17分中断経て再開も右肩痛
◆テニス 全仏オープン 第5日(30日、パリ・ローランギャロス) 【パリ30日=吉松忠弘】元世界ランキング4位の錦織圭(34)=ユニクロ=が棄権した。雨で中断した前日の男子シングルスの2回戦が再開し、第15シードのベン・シェルトン(米国)との試合に第1セット途中から臨んだが、6―7、4―6で迎えた第3セットの前に右肩痛で退いた。2日がかり、計33時間5分の奮闘だった。完全復帰をかけて、心身ともにタフさを求められる赤土のコートで闘った錦織を「見た」。 * * * 2セットを終え、降雨で中断している最中だ。プレスルームに、突然、「錦織が今から会見します」と、英語でアナウンスが流れた。雨が上がり、試合の7番コートは、すでに審判が待機し準備。しかし、コートに現れるはずの錦織は会見場に姿を見せた。2日がかりの奮闘の結末は棄権だった。 原因は右肩痛だった。昨年7月のアトランタオープン以来のツアー大会出場となった今年3月のマイアミオープンで痛めた。「2~3か月、苦しんできた」。試合中はまだ我慢できたが、降雨中断で「アドレナリンも切れて、痛みが出始めた」ことで決断した。 試合再開は第1セット5オールから。タイブレイクで5―2とリードし、6―5でセットポイントも握った。4大大会でシード選手と対戦する緊張感は久しぶり。右肩痛も加わり「もう少しファースト(サーブ)が入っていれば取れた」と逆転され、落とした。 第2セットも1―5から追い上げた。しかし、もう一歩届かなかった。2セットダウンも、棄権を促す要因ともなった。「(セット)2―0だったらやっている。でも0―2だと3セットを取らないといけない。さらに悪くしてしまうと、やめる判断をした」。 第1セットの開始が、前日5月29日の午前11時11分。同日の午前11時51分に降雨中断し、そのまま30日に延期となった。この日の午後6時8分に再開し、中断時間は30時間17分。降雨や日没での延期は珍しくはない。しかし、4大大会で味わう緊張感を維持する感覚は、久しぶりだったに違いない。 赤土はバウンドしてからの球脚が遅く、ラリーが長く続く。最大限に精神も体力もタフさが要求され、勝ち抜くには、すべてのテニスの技術が試される。全仏という、その最高峰で復帰を決めた錦織は、痛みの中にも、戦える光明を見ていたはずだ。 赤土の舞台はパリ五輪に受け継がれる。「1~2か月前は、自信をなくしていた。それがトップの選手と練習ができ、ある程度の試合もできた。収穫はすごくあった」。17日開幕のドイツ・ハレの大会で芝コートをスタートさせるつもりだが、まずは右肩の検査の結果待ちとなる。 〇…錦織は当初、全仏2週目に当たる3日からのクロアチア・ザグレブで行われる赤土の下部大会参加を予定していた。芝コートは、17日開幕のドイツ・ハレの大会から、7月1日に始まるウィンブルドンまで、3大会にエントリーしている。しかし、右肩の検査結果によっては欠場の可能性も出てきた。 ◆錦織のパリ五輪出場権 全仏オープンが終了した翌日の6月10日付の世界ランキングで、男女シングルスは各国最大4人で、上位56人までが出場権を得る。錦織は現在、世界350位だが、けがなどで長期離脱した選手を救済する公傷世界ランキング(現在48位)による五輪出場権を持つ。
報知新聞社