桐谷健太、真剣に悩んだ末に見つけた答え「無垢な自分のなかにパーフェクトな世界がある」
自分の中にスッと入ってきた感覚は大切にしたい
――桐谷さんから発せられる言葉には、人間的な深みが感じられる気がするのですが、これまで演じてきた役柄を通じて、他者や自身を見つめる多角的な視点が培われた結果、熟成されたワインのような"桐谷健太像"が出来ているのか。それとも、天性のものなのか。お話を伺っていて、非常に興味が湧いてきました。 それは、どちらもあるんでしょうね(笑)。ただ一つ言えるとしたら、自分の中に湧き上がる"直感"みたいなものは、僕はすごく大事にしているかもしれません。こうやって取材を受ける際の言葉選びも、自分が感じたことをなるべくそのままスパッと言うようにしていますし。それは、これまで僕自身がいろんな経験をしてきたことからくるものなのか。逆に、今までの経験は直接的には関係なくて、でもそのおかげで心の扉が開いた状態で言葉が出るようになったのか。そこはちょっとよくわからないですけど、自分の中にスッと入ってきた感覚をどんな時でも大切にしたいなとは思っているんです。 ――今回の橋本を演じる上では、桐谷さんの「直感」はどんな作用を及ぼしましたか? 橋本の場合は、見た目に鋭さを出すより、むしろちょっとムチッとしていた方が奇妙な感じが出せるかもしれない…と思って、身体を大きくしてみたんです。今回はそれが自分の頭にスコンって入ってきて。 ――今回、桐谷さんは原作を読まれていないとのことでしたが、結果的に原作の橋本像とどこかシンクロしているのも興味深いです。意識して寄せたわけではなく、あくまでもご自身の直感を大事にしながら役を育てていかれたと。「橋本という人物は他人から見ると得体の知れない、何を考えているか分からない男ですが、そこにはやはりタネがありました。そのタネを辿りながら、橋本という木を育てました」という表現も印象的でした。 僕の場合、作品や台本によっても役へのアプローチの仕方はまったく違っていて。直感的に「この役はこうだ!」とわかる役もあれば、どれだけ台本を読んでも全然理解できなくて、衣装合わせで衣装を着た瞬間に「あっ!」と掴めることもある。かと思えば、動物が出てくるときもあったりするんですよ。 ――動物ですか!? 「この役って、人間の皮を被ったトカゲみたいやな」とかイメージが下りてくることもあって。別にトカゲが悪いとかじゃないんですけどね。あとは「友達のあいつに似てるな」みたいなケースもあったりします。今回の橋本みたいな役の場合も、もしかしたら自分が気付いていないだけで、昔どこかで一緒になったことがあるかもしれないですけど(笑)。「この人、口は笑ってるけど、目は全然笑ってないな」みたいな感覚も、別に直感ではなくて、脳内のどこかにある記憶からピュッとやってきてる可能性も無くはないですけど。 ――「直感とは、まだ言語化できていない経験則」とも言われますからね。 でも「あいつは二面性がある人間だ」みたいなことって、意外と人のことを見ているようで、実は自分自身をその人の中に見ているだけなんじゃないか、という気もするんです。