ビートたけしが尊敬し、阿川佐和子が兄貴と慕った…作家・伊集院静が最後まで貫いた「大人の生き方」
作家の伊集院静氏が亡くなってから1年が経った。数々の名作を遺した直木賞作家でありながら、作詞家としてヒット曲を飛ばし、レコード大賞も受賞。交友関係は広く、ビートたけしや阿川佐和子、加藤シゲアキなどその無頼な生き様に憧れる著名人は多い。 【写真】死ぬ瞬間はこんな感じです。死ぬのはこんなに怖い そんな氏の生き方や交遊録を綴ったベストセラーエッセイ「大人の流儀」シリーズの最終巻『またどこかで 大人の流儀12』がついに刊行となった。 実は伊集院氏は、死の直前まで原稿を書き続けていたのだ。彼が最後に遺した言葉とはいったいどのようなものだったのか。その一部を紹介する。
哀しみに添い遂げられれば充分過ぎると思う
〈文学賞などどうでもイイ。私の本の読者の哀しみに添い遂げられれば充分過ぎると思う〉 連載「大人の流儀」の最後は、この言葉で幕を閉じた。この原稿を書いた数日後、伊集院静氏の体調は急速に悪化。昨年11月24日、帰らぬ人となった。まるで死期を悟っていたかのような言葉だが、そんな素振りはいっさい見せなかった。 氏は以前、父親が亡くなった時に担当医に言われたことを、こう述懐している 〈「身体の中を診て驚いたのですが、ともかく内臓のあちこちがひどい状態でした。あれで痛いとおっしゃらなかったのが信じられませんでした」 父らしいと思った〉 大人は弱音を口にすべきではない――そんな己の流儀を貫いたのかもしれない。 息を引き取った病院の前には、氏が愛した杏林がある。生前こう綴っている。 〈中国に名医がいて、貧しい人を診て、代金が払えない時は、杏子の苗を数株持ってくればイイとした。それがやがて育って林になったという。イイ話である〉 氏が遺した言葉もまた、読む人々の心の中で生き続けるに違いない。 大切な人との別れのとき、大人はどう考え、どう振る舞えばいいのだろう。数えきれない出逢いと別れを経験してきた作家が死の直前まで書き綴ったラストメッセージ。国民的ベストセラー「大人の流儀」シリーズ最終巻!
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