【#佐藤優のシン世界地図探索55】日英伊共同開発の「F3戦闘機」を巡る壮絶なだまし合い
ウクライナ戦争勃発から世界の構図は激変し、真新しい『シン世界地図』が日々、作り変えられている。この連載ではその世界地図を、作家で元外務省主任分析官、同志社大学客員教授の佐藤優氏が、オシント(OSINT Open Source INTelligence:オープンソースインテリジェンス、公開されている情報)を駆使して探索していく! * * * 日英伊の三か国で共同開発することとなった次期戦闘機F3。このF3の第三国への輸出が解禁された。しかしその輸出に関しては、3つの条件に限定されて許可されることになった。その3項目とは、 1.輸出は次期戦闘機に限る 2.輸出先は国連憲章に沿った目的以外の使用を禁じる「防衛装備品・技術移転協定」の締約国に限定 3.「現に戦闘が行われている国」は除外される である。実はここに至るまでに、国内外を舞台とした壮絶な"だまし合い"が繰り広げられていた。 ――一体どんなだまし合いがあったのですか? 佐藤 まず国内の話です。日英伊の共同開発の話が上がった際には、自民党が「外国に出さないから」と公明党を説得することで始まりました。しかし、共同開発が決まると「やはり外国に出す」という話になりました。乗った船の行き先が違うわけですよ。 ――だまし合いその①は、日本国内での自民党の話。そこからどうやって、自民党は公明党を説得したんですか? 佐藤 説得していません。 ――どうなっているんですか? どこかで、誰かにだまされたんですか? 佐藤 元外務次官で国家安全保障局長を務めた谷内正太郎氏の武器輸出についての考えに関して、日本経済新聞(2月29日)はこう報じています。 『現行の三原則は対象とする国や製品を厳しく制限する。谷内氏は何を禁じるかを示す「ネガティブリスト型」を基本とする必要性を強調した。問題の有り得る対象は国家安全保障会議(NSC)のもとで検討し判断するのが適当だとの考えを示した』 要するに、「なんでもありにしろ」ということです。 ――谷内氏はすごく聡明で実力のある方ですよね。 佐藤 谷内氏は現在、「富士通フューチャースタディーズセンター」の理事長です。富士通が彼のために作った研究所で、年間3000万円もらっているので、今は防衛産業から利益を得る当事者です。 ――だまし合いその②は、当事者なのにそうでないフリをして、考えを提示したことだと。 佐藤 そうです。国会や閣議を通さずに国家安全保障局で決めれば何でもできるということです。 ――それ、戦前の統帥権の奪取に似てませんか? 天皇陛下を担ぎ出して、御裁可をいただければ、軍部はなんでもできた。