小池都知事「無電柱化を加速度的に」条例制定の意向示す
「東京の電柱をゼロにしたい」。東京都の小池百合子知事は12月1日、都議会での所信表明演説で、電線の埋設化などによって電柱をなくす「無電柱化」をさらに推進する条例を制定したい考えを明らかにした。無電柱化は小池知事が衆院議員時代から取り組んできた思い入れの強い政策。国土交通省道路局によると、無電柱化の条例を制定している自治体に、つくば市(茨城県)があるが、都道府県レベルでは条例制定の動きは把握してないといい、新しい試みとなる。 【写真】小池新都知事誕生で起こせるか 目玉政策に挙げた東京“無電柱革命”
海外と比べて低い無電柱化率
無電柱化をめぐっては、建設に膨大なコストがかかる点や災害時に復旧しにくいなどのデメリットを指摘する声がある。一方で、電柱には、地震などの災害時に倒壊して救援や復旧活動を妨げるリスクや、平時でもベビーカーや車椅子利用者の通行を妨げたり、景観を損ねたりするなどの課題が挙げられる。 こうした課題に対応するため、無電柱化への取り組みが国や自治体で以前から進められてきたが、コストなどの問題もあってあまり進んでいないのが現状だ。国土交通省によると、ロンドン、パリ、香港の無電柱化率は100%(2004年)、台北が95%(2013年)、ソウルが46%(2011年)であるのに対し、東京23区は7%、大阪市が5%(いずれも2013年度末)にとどまる。国内の都道府県で、もっとも進んでいるのが市町村も含めた東京都で5%弱。他の道府県は3%以下という状況になっている。
技術革新を進めてコスト削減
小池知事は、衆院議員時代から無電柱化の議員連盟を立ち上げ、議員立法で無電柱化を推進する法案の成立を目指すなど、無電柱化の取り組みに力を入れてきた。2日の定例会見では、無電柱化推進法案が衆院委員会で可決されたことを自ら報告し、「積み残しの法案が産声を上げそう。成立を見守りたい」と喜んだ。「無電柱革命」という東京大学大学院総合文化研究科の松原隆一郎教授との共著もある。 今夏の都知事選でも無電柱化を公約の一つに掲げており、1日の所信表明演説では「国の動きも踏まえて、無電柱化を推進する条例案を検討していきたい」との考えを示した。 もっとも、東京都では2014年12月に無電柱化推進計画をすでに策定している。それでも新たに条例を制定する理由について記者が尋ねると、小池知事は「これまでの計画を加速的に進める条例案にしたい」と説明した。条例案には、無電柱化のコストを低減させるため、技術開発を促進する項目も盛り込む考えを示し、それによって無電柱化された道路の長さがどんどん伸びていくと見込む。 都の道路管理部によると、条例案の中身はこれから検討作業を進める予定で、都議会への上程時期は未定。小池知事は「できるだけ早くと考えているが、担当局にできるだけスムーズに進めるよう指示したい」と述べた。 (取材・文:具志堅浩二)