木村石鹸「自己申告型給与制度」に込めた会社の願い ただ「いる」ことに価値がある「being」も評価したい
■個々人の可能性や価値を高める「覚悟の交換」 人を評価するとき、他人と比較しない。比較するとしたら、その当人の「過去」と。そう決めています。 それでもふとした折に、無意識にやってしまうことはあります。 「〇〇さんに比べたら、ちょっと仕事が遅いんじゃないかな」などと言ってしまったり。 意識していても、ついついやってしまうくらい他人との比較は、ある意味、簡単です。他人と比較すると必ず優劣が生まれます。
Aさんに比べたら、Bさんはここがダメ、ここができていない。BさんはCさんよりここが優れているなど、他人と比較すると必ず、誰かの強みは、誰かの弱みになります。 まったく同じ業務内容の場合、Aさんは〇分でできる、Bさんは〇カ月でここまでできたといったような比較はその業務をアップデートしていくためのベンチマークになるのかもしれません。これを意図的にやって、やる気を引き出すマネジメントもあるのでしょう。
でも自分が同じようにされたら、気分はよくありません。人とダイレクトに比較して、「できなさ」をあぶり出し、あおり立てるようなやり方は嫌いです。僕はそうじゃない方法を取りたい。 ■「自分はどうすべきか」に意識を向けて 自身の給与を自分で提案する「自己申告型給与制度」は、他人との比較がないのがよいところ。会社としても誰と比べてどうか、という判断はしません。 あくまでもその人の今までの信頼や実績と、これからやろうとしていること、そのやろうとしていることを会社はいくらの価値と考えるか、社員はいくらの価値だと考えるかの擦り合わせを行い、給与を決めます。
自分の給与が他の人に比べて低いという不満があるならば、納得できる給与を提案すればいい。ただし、希望する金額に対しての根拠を提案し、会社を説得しなければなりません。 不満でくすぶるのではなく、自分がどんな働きをすれば、どんな貢献をすれば、その「他人」と同じ給与になるのか? というふうに考えてもらえると、経営側としてはうれしいわけです。 誰かと比較して高い低いではなく、その額を得るためには、「自分はどうすべきか」に意識が向く方が、その人の成長にとってもよいことだと思うのです。
木村 祥一郎 :木村石鹸工業株式会社 代表取締役社長