『ブギウギ』“強火オタ”水上恒司が推しの魅力を熱弁 許されざる恋にどう向き合う?
蓄音機を聴きに来ないかと愛助(水上恒司)に誘われたスズ子(趣里)は、小夜(富田望生)をともなって愛助の下宿を訪れる。『ブギウギ』(NHK総合)第54話では、スズ子と愛助の距離が近づいた。 【写真】見つめ合う愛助(水上恒司)とスズ子(趣里) 愛助が自宅に招いて聴かせようとしたレコードは、なんとスズ子の曲。目を輝かせてスズ子の魅力を熱弁する愛助にスズ子は面食らう。梅丸少女歌劇団(USK)時代からスズ子を観ている愛助は筋金入りのファンで、スズ子を絶賛する評論家の記事を読み上げ、「僕は福来さんがいっちゃん好きでした」と打ち明けた。 スズ子からすれば、面前で自分のことを激賞されるのは悪い気持ちはしないものの、こそばゆくて仕方ないと言ったところ。前話ラストで若干引き気味な様子も見られたスズ子だったが、歌手・福来スズ子の魅力をとうとうと述べる愛助を見て、心を開いていく。 「福来さんの歌は周囲をパ~ッと明るすると思うんです。つらさや苦しみを吹き飛ばしてくれます」 愛助にとってスズ子は病弱だった自分を勇気づけ、希望を与えてくれた存在。汽車でスズ子が「故郷」を歌う場面に遭遇し、「唯一無二の歌手」という印象は確信に変わった。“推し”の尊さを強調してやまない愛助の言動は、暴走気味であぶなっかしい部分もあるが、その逸脱ぶりも含めて微笑ましい。なかば押し切られるような形で、スズ子は愛助と二人で会うようになった。 「学生さん」から「村山さん」に呼称が変わったこの段階で、スズ子に恋愛感情はなく、自分を好いてくれるファンに付き合っている認識だ。おでん屋で自身の生い立ちを明かし、「チャップリンやキートンみたいに世界中の人を笑わしたい」と夢を語る愛助に、スズ子自身、気付かないうちに魅せられていたかもしれない。
さて、関係が深まれば、必ずそれを邪魔する人間が現れる。親しく自宅を行き交うスズ子と愛助を見て渋面を作っていたのは、村山興業東京支社長の坂口(黒田有)だった。メッセンジャーもとい刺客として登場した坂口は、楽団の事務所を訪ねて「うちのボンをたぶらかすのやめていただきたい」とスズ子に通告した。 村山興業の御曹司で家業を継ぐために大学で学んでいる愛助の世話係であり、お目付け役でもある坂口は、“ボン”の火遊びは未然に消火しなければならないと考えた。「恥ずかしないんでっか? 10も下の大学生もてあそんで」とスズ子をなじり、交際するなとほのめかした。 驚いたのは愛助の方だ。スズ子から坂口の言葉を聞いた愛助は、血相を変えて抗議した。スズ子は愛助に六郎(黒崎煌代)を重ねており、自分と親しくすることで愛助に迷惑がかかることを怖れている。年齢は言い訳で、会わないでおくのは純粋に自分を慕ってくれる愛助への気遣いなのだが、愛助の気持ちはそれを上回っていた。 許されざる恋という朝ドラの一大テーマが鮮明になった。強火オタそのものの愛助は最初からスズ子に本気だった。愛助の告白をスズ子がどう受け止めるか注目される。
石河コウヘイ