美容家・三上大進氏 パラリンピック取材で意識変化「三日月みたい」この世に1つだけ 障がいも向き合い方も千差万別
元NHKパラリンピックリポーターで美容家の三上大進氏(33)が初エッセー「ひだりポケットの三日月」(講談社)を発売し、このほど都内でデイリースポーツの取材に応じた。2018平昌、2020東京とパラリンピックリポーターを務め、左上肢機能障がいを抱える視点で精力的に取材し、明るい人柄で一躍人気者に。性的マイノリティーであることを公表し、自らを「体と性のダブルマイノリティー」と位置づける。28日未明(現地時間27日)にパリで開幕するパラリンピックと著書への思いを語った。 サラサラの髪に透き通るような肌。女子アナを自称してきた明るいキャラクターは取材中も変わらない。よく笑い、よく話す。初恋は、アニメ「美少女戦士セーラームーン」のタキシード仮面。「恋愛対象はずっとメンズ」と照れながら話す。どこまでも真剣で、どこまでもユーモラスに、自身を明かしていく。 「すごく良い言い方をすれば三日月みたいでしょう」。障がいのある左手をテーブルに置く。パラリンピックの取材が意識に変化をもたらした。 「私のように腕に障がいがある方もいれば、車椅子の方もいて。知的障がい、聴覚障がいの方も。同じ程度、同じ形の人は1人もいない。私の体もこの世に1つだけ」 リポーターの経験が見ていた景色を変えた。著書タイトル「ひだりポケットの三日月」には、さまざまな意味を込めた。 「左手を見られたくなくてポケットに隠すしかない時代もありました。生んでもらった体を隠すことが母に申し訳なかった。今は両手を振って歩いています。でも、障がいが千差万別なように、向き合い方も千差万別でいいなって。左手を隠すことで守れた自由もあったし、隠さないことで得られた自由もあって」 悲しみを遠ざけようとする自分。乗り越えようとする自分。どちらも偽りのない思いだ。 「人との違いに苦しんでいる方に、この本を読んでいただきたいです。無理に胸を張る必要はないけど、かけがえのない自分を大切にしてほしいので。読んだ人が昨日よりもほんの少しだけ自分を愛せたらいいなって」 自分らしくあるために。何度も救ってくれたのは母の思い。食べ方や身だしなみ、常に目を光らせていた母は、わが子の痛みにも敏感だった。 「体を理由に私が私を嫌わないよう、母は徹底的に厳しくて。でも、居残りで絵を描いて、全く上手にできず悔しい思いで帰ったら『こんなキレイな絵を見たことない』って急に親バカになっちゃう。できないことや認めてもらえないことで私が落ち込むことも知っていたんです。とても厳しくて、とても優しい人」 初エッセーには、悲しみも喜びも感謝も詰め込んだ。「母が一番喜んでくれるのは、私が私らしく幸せに生きること」と目を細める。笑顔の奥には母がかけた魔法の言葉。「あなたは自由よ」。思い返す度に、いつだって自分らしくいられる。 ◇三上大進(みかみ・だいしん)1990年10月20日生まれ。東京都出身。大学卒業後に外資系の化粧品会社に就職。NHKパラリンピックリポーターに採用され、2018平昌、2020東京を取材。美容家としても著名で、自身がプロデュースするスキンケアブランド「dr365」は多数の美容インフルエンサーが愛用していることで話題に。日本化粧品検定1級、化粧品成分検定1級。