手紙などの「信書」配達はなぜ実質、日本郵便だけなのか?
全国に10万本のポスト設置などが条件
信書の送達は民間事業にも形式的には開放されているものの、どのような規制が新規参入を阻んでいるのでしょうか? 行政書士サカモト法務オフィスの阪本浩毅さんはこう説明します。 「手紙などを輸送できる『一般信書郵便事業』は、信書便法第9条などでユニバーサルサービスの実現が求められています。これは、全国で誰もが等しくサービスを受けられる環境です。というのも、都会は手紙が届くけど、離島は届かないとなると不便ですよね。そして、そのサービスを提供するための条件の一つが、全国に約10万本の信書便差出箱(ポスト)を設置することなのです。実は、これが新規参入を阻んでいる最大の要因といえます」 ポストの設置に対し、ヤマト運輸は2013年4月19日に発表した声明文「文書輸送に対する規制問題について 」の中で、「ユニバーサルサービスに本当な必要な条件なのか? より緩やかな条件で足りないのか? という検証がない」「ユニバーサルサービスについては、当社の取扱店は全国に20万店以上ありますから、これらの活用や、同じく全国に散在するコンビニ店の活用により、信書便差出箱を設置せずとも実現可能です」(いずれも原文ママ)としています。 「ヤマト運輸の取扱店などが信書便差出箱の役割として認められないのは、おそらく24時間投函可能なポストに対し、店舗は営業時間が終了したら出せないといった理由からでしょう」(阪本さん)
規制緩和への動きは?
電報サービスなどの「特定信書便」については2014年12月、総務省が最低料金引き下げなどを盛り込んだ規制緩和案をまとめました。改正案は今年の通常国会に提出され、早ければ10月にも規制が緩和される見通しです。一方、「一般信書便」の新規参入規制は維持する方針となっています。 現状の規制が国民のニーズに対応したサービスを提供できているのかどうか。そもそもこの規制が新規参入のために門戸を開く建前になっていないかどうか。クロネコメール便廃止をきっかけに、「信書」をめぐる議論に注目が集まりそうです。 (南澤悠佳/ノオト、取材協力/行政書士サカモト法務オフィス)