池袋暴走事故から5年 服役中の元院長から届いた8つの答え 妻と娘失った松永さん「被害者や加害者にならない社会を」
東京・池袋で車が暴走し11人が死傷した事故から19日で5年。突然の事故で妻と娘を失った松永拓也さん(37)のもとには、事故を起こした元院長から謝罪の言葉が届いていた。 【画像】事故現場近くの慰霊碑には多くの花が手向けられた そこには面会を受け入れる意思も記され、松永さんは「やっと再発防止を目指すという同じ視点を持てた」と今の思いを語った。 2019年4月19日、東京・池袋で旧通産省工業技術院の元院長・飯塚幸三受刑者(92)の運転する車が暴走し、松永さんの妻の真菜さん(31)と娘の莉子ちゃん(3)が死亡。ほかにも9人が重軽傷を負った。 この事故から19日で5年。事故の発生時刻に合わせて、松永さんは現場近くの慰霊碑で黙祷を捧げた。 松永さんは、「もう5年も経ったんだなという気持ちと、まだ5年しか経っていないんだという気持ちが混在していて不思議な気持ち。ただやっぱり命日になるとどうしても悲しくて、2人に会いたいという気持ちはどうやっても拭えない」「誰もが加害者と被害者にならないようにするには、どうすればいいのか…社会全体で一緒に考えてほしい」と語った。 また、飯塚受刑者については「悪感情がゼロと言えば嘘になるが、自分にとっても社会にとってもフェーズが変わった」と述べた。 刑事と民事の裁判が終わり、松永さんと飯塚受刑者との関係には変化があったのだ。
松永さんと飯塚受刑者をつないだ新制度
法務省が2023年から始めた「被害者等心情聴取・伝達制度」。 被害者の気持ちを刑務所などの職員が聞き取り、加害者に伝える制度だ。松永さんは2024年3月、この制度を利用して、刑務所で服役中の飯塚受刑者に「真菜と莉子のことを忘れないでほしい」「高齢ドライバー問題についての意見や経験を聞かせて欲しい」と伝えた。 さらに事故について質問を投げかけたほか、面会したいと訴えたのだ。 そして4月、命日を前に飯塚受刑者から松永さんのもとに返答の書面が届いた。
飯塚受刑者「運転しないことが大事」謝罪の言葉も
飯塚受刑者の収容先から届いたのは「心情等伝達結果通知書」。4月5日付けで、A4の紙2枚にQ&A方式で、松永さんの問いかけと飯塚受刑者の答えが記載されていた。 松永さんからの8つの問いかけと、その答えの全文は以下の通りだ。 Q あなたはどうすればこの事故を起こさずに済みましたか 「運転しないことが大事です」 Q 高齢者として、どのような社会であれば事故を起こさずに済みましたか 「運転しないことです」 Q病院までの無料又は500円程度の送迎サービスなどがあれば利用しましたか 「はい」 Q 医師から、明確に運転を止められていたとしたら、あなたは運転をやめていましたか 「やめていました」 Q 事故当時、自分自身はパーキンソン病又はパーキンソン症候群の可能性があったと思いますか。 「はい」 Q パーキンソン症候群が運転をしてはいけないという分類に属されているとしたら、運転をやめていましたか。 「やめていました」 Q家族からどんな声掛けがあれば、運転をやめようと思いましたか 「やめるように強く言われていたらやめていた」 Q 高齢で刑務所に入る苦しみはどのようなものですか 「(いろいろな規則や指示に)従うことが苦しい」 職員が松永さんの心情を伝えた際、飯塚受刑者は言葉を詰まらせる場面もあったが、一文一文に「はい」と返答。全てを聞き終えると「申し訳ない」と述べたという。 さらに面会に応じる意思も示し、質問の回答についても社会に公表をしてよいと答えた。