ベトナム人300人が集結! ベトナム旧正月「テト」が埼玉県越谷市で祝われていた
在日外国人の増加に伴い、日本各地に様々な国の信仰施設が作られ始めている。日本における“宗教国際化”を取材してきたルポライターの安田峰俊氏は、埼玉県越谷市にあるベトナム寺院、南和寺でおこなわれたテト(旧正月)の行事を訪れた。そこから見えた、「善き」在日ベトナム人たちのリアルとは。 【写真】民族衣装姿が素敵な女性
2010年代以降、訪日中国人観光客が増加したこともあって、いまや日本でも「春節」の存在が広く知られるようになった。これは旧暦の正月(旧正月)で、中国本土や台湾・香港、韓国、ベトナムなど日本以外の漢字文化圏の各国では、西暦の1月1日よりもこちらを盛んに祝う。今年の春節は2月10日だ。 春節はベトナムではテト(Tết)と呼ばれる。基本的に中国の春節と同じ日(25年に1回だけ1日ずれる)で、盛大に爆竹を鳴らすなど中華圏の春節と似た祝われ方をするが、バインチュンというちまきに似た食べ物を食べるなど違った部分もある。 現在、日本にはベトナム系の仏教寺院が複数あり、テトの際は多くの在日ベトナム人が集まる。そこで、埼玉県越谷市にある南和寺(Chùa Nam Hòa)に様子を見に行ってみた。
越谷駅前のバスからベトナム人だらけ
南和寺でのテト関連行事は、大晦日にあたる2月9日の夜の年越し法要と、テト当日の法要、さらに2月11日の出し物と、3日にわたりおこなわれる。 行事のメインは11日の出し物である。本来は元旦の10日におこなうらしいが、寺に集まる在日ベトナム人には技能実習生や勤労留学生も多いため、彼らが確実に休みを取れる日曜日に開催することになっているらしい。 同日の朝に越谷駅で乗り換えると、寺に隣接するしらこばと水上公園行きのバスの乗客はほとんどがベトナム人で、すでにどこの国にいるのかわからないような空間になっていた。 午前10時半ごろに寺に到着すると、すでに100人以上のベトナム人が集まり、仏様に初詣をするべく列を作っている(最終的に300人くらいまで増えた)。大規模公園に隣接しているので、マイカーで来ても停める場所は充分あるようだ。 参拝者には技能実習生や留学生らしき20~30代の男女が多い。子連れの家族もいるが、彼らは留学後に日本に定住して就職や起業をした人たちだろう。若者の群れに混じって、60代くらいの男女が多少いるのだが、彼らはおそらく1980年代にインドシナ難民として日本にやってきた人たちだ。 現在、日本にあるベトナム寺はこの南和寺のほか、東京都や神奈川県、埼玉県本庄市、静岡県浜松市、兵庫県の神戸市や姫路市など各地にある。その多くは、往年のインドシナ難民たちが日本での暮らしを安定させてから、故郷を懐かしんで建てたものだ。 たとえば南和寺の場合、2003年に難民たちが文字通り「手」を動かして建てたというすごい歴史がある(インドシナ難民は日本で建設業などのブルーカラー業界で働いた人が多かったのだ)。ただ、近年は新たに来日した若いベトナム人の出稼ぎ労働者が激増したため、寺に集まる人たちはむしろ若者がメインになっている。