J3クラブはどう決まる? 参加候補の19クラブが確定
■選手の待遇面 プロ契約選手を3人以上と少なめに設定したのも、クラブの財政面と密接とリンクしている。今シーズンから悲願のJFL昇格を果たした福島を例に取れば、Jクラブから期限付き移籍している選手を除いて、原則として全員がアマチュア契約を結んでいる。 基本的に練習は午前中で、選手たちは昼食後に休憩を取り、各々仕事に向かう。サッカースクールで子供たちを教えている選手もいれば、居酒屋で日付が変わるまでアルバイトをしている選手もいる。代表取締役を務める鈴木勇人氏は言う。 「ウチの場合はサッカー選手である前に一人の社会人として、まずは地元へ一生懸命貢献してもらっています。かなり厳しい環境だと思いますが、そうした状況で上を目指すクラブの姿勢があるからこそみんな頑張れる、福島の方々に温かく迎えられていると思っています」 福島の場合、東北社会人リーグ1部からJFL昇格を果たした段階で、オフィシャルスポンサーが倍以上の46社に増えた。ユニホームの左袖とパンツ、練習ウェアはすべてスポンサーのロゴで埋まったが、最も大きな金額で販売できるユニホームの胸と背中は現時点で空白のままだ。鈴木氏が続ける。 「(胸と背中が契約できれば)ありがたいお話です。単なる支援をいただくのではなく、企業とタイアップしながら我々のクラブと一緒に育っていけるような形を取れれば、それがきっかけで福島が変わっていく、復興が前へ進んでいくことが大事だと思っています」 J3参戦決定が呼び水となって地元企業を中心にスポンサーが増えていけば……Jリーグが定める年俸上限480万円のプロB契約がメインとなるだろうが、それでもおのずとプロ契約選手の数も増え、選手たちがサッカーに専念できる環境が整うことになる。 ■地域の盛り上がり 今回申請した19クラブの所在地を見ると、Jクラブが存在しない都道府県が「11」を数えている。前出の岩本アシスタントチーフは、選手やスタッフが活動できる場が増えるという現場に主眼が置かれた目的以上に、「サッカーに縁がなかった街に新しい風が吹いたことが一番大きい」とこう続ける。 「J3のクラブが一気に10億円、20億円の規模にはなれない。でも、地元にしっかり根差して、地域を活性化させていけば2億円、3億円のクラブにはなれる。そうした中から松本山雅や岡山のようにJ2で成功を収めているようなクラブが出てくればJ2の下位クラブの脅威になり、全体が活性化する。これだけ多くのクラブに興味を持っていただき、まさに嬉しい悲鳴です。我々にはきちんとしたリーグを作る責任があるし、J1やJ 2からも『J3があってよかった』と思われるようにならないといけない」 再び福島を例に取れば、最低でも3年間はJFLで組織力と経営基盤を固め、地域をさらに盛り上げてからJ2へ挑むという青写真を描いていた。急きょ方針を変更した背景にはJ3創設決定ともうひとつ、今もなお残る東日本大震災と福島第一原発事故の影響がある。鈴木代表が力を込める。 「現状では特に子供たちが夢や希望を見出せない状況にある。その意味でも福島県初のJクラブが誕生し、頑張れば上に行けるという状況が生まれれば、我々の挑戦が福島の人たちの勇気になる。準加盟申請はそのための第一歩なんです」 ホームスタジアムとする福島市の県営あづま陸上競技場での開催は規定ぎりぎりの80%にとどめ、残りは会津や磐城、郡山、太平洋沿いの相馬などの県内で開催するプランも描いている。クラブ名のユナイテッドは「結びつき」を意味する。「クラブ名のもとに県民がひとつになれれば」と鈴木氏は笑う。 J3の開幕はJ1とJ 2と同じ時期を予定している。熟慮の末に今回の準加盟申請を見送ったクラブは最低でも5つを数え、今回漏れるクラブとともに来年以降の参戦を検討するだろう。順調にクラブ数が増えていけば、移動経費を削減するためにリーグを東西などに分けることも検討していく予定だ。 (文責・藤江直人/論スポ)