ロイヤル・バレエ『ドン・キホーテ』映画館で上映 ギャリー・エイヴィス&若手ダンサーにも注目
英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2023/24 ロイヤル・バレエ『ドン・キホーテ』が、2月1日(木) までTOHOシネマズ 日本橋ほかで上映されている。本稿では舞踏評論家・森菜穂美の解説とともに見どころを紹介する。 【全ての写真】英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2023/24 ロイヤル・バレエ『ドン・キホーテ』 『ドン・キホーテ』はあらゆるクラシック・バレエ作品の中でも最も明るく楽しいラブコメディで、華やかな超絶技巧もふんだんに盛り込み、スペインの生き生きと情熱的なパワーにあふれている。バレエ初心者でも、そのパワフルさと華麗な魅力に思わず引き込まれてしまう傑作だ。 バルセロナの街角を舞台にした本作は、『白鳥の湖』などで知られる巨匠マリウス・プティパが20代の頃、マドリッド王立劇場と契約し、スペインで過ごして闘牛やキャラクターダンスに夢中になった体験が生かされている。街の踊り子、闘牛士、ファンダンゴ、ロマの踊りなど多彩なキャラクターやエキゾチックな踊りが、作品に生き生きとした魅力的な味わいを加えている。 また、元プリンシパルで世界的なスターのカルロス・アコスタ(現バーミンガム・ロイヤル・バレエ芸術監督)が2013年に振付けを担当。劇中では登場人物たちが台詞を叫ぶ場面や、ダンサーたちが床の上だけでなく、テーブルやワゴンの上でも踊るといった演出も取り入れられた。彼の振付について森は「彼にとって重要なのは登場人物たちの個性であり、バレエのステロタイプに囚われず一人一人が生身の血の通った人間として描かれている」と説明している。 ヒロインの町娘キトリを演じるのは、2011年にローザンヌ国際バレエコンクールで優勝したブラジル出身のマヤラ・マグリ。森は「夢の場面での、一転してエレガントで軽やかなドルシネア姫との演じ分けにもぜひ注目していただきたい」と注目ポイントについてコメントしている。 キトリの恋人、床屋のバジル役を演じたのは、人気の高い英国出身のマシュー・ボール。端正な容姿で、マシュー・ボーンの『白鳥の湖』では男性の白鳥を演じるなど様々な舞台にチャレンジしている。ボールは、私生活ではマグリとカップルで、ふたりの息はぴったり。コミカルな掛け合いが自然で、片手リフトなどのパートナーリングも見事に決まり、最後のグラン・パ・ド・ドゥではダイナミックな跳躍を見せている。 さらに、若手ファースト・ソリストのカルヴィン・リチャードソン(闘牛士エスパーダ役)をはじめとする、伸び盛りの若手ダンサーを発見できるのもシネマシーズンならではのお楽しみのひとつ。そしてこれら若手ダンサーの活躍とともに作品を引き締めるのは、ドン・キホーテ役を演じるバレエ団を代表する名役者ギャリー・エイヴィス 。森は「エイヴィスの気品あふれる演技によって、高潔な人格を持つロマンティックな老紳士としてのキホーテのキャラクターが立ち上ってきます」と舞台上で強烈な存在感を放つエイヴィスの演技に賞賛を送っている。 今回上映された公演には、英国王チャールズ3世とカミラ王妃も臨席し、彼らが客席から拍手で迎えられる場面も収められており、シネマシーズンで中継された公演に英国王が臨席するのは初となる。 <作品情報> 英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2023/24 ロイヤル・バレエ『ドン・キホーテ』 振付:カルロス・アコスタ、マリウス・プティパ 音楽:レオン・ミンクス 【キャスト】 ドン・キホーテ:ギャリー・エイヴィス サンチョ・パンサ:リアム・ボズウェル ロレンツォ(キトリの父):トーマス・ホワイトヘッド キトリ:マヤラ・マグリ バジル:マシュー・ボール ガマーシュ(金持ちの貴族):ジェームズ・ヘイ エスパーダ(闘牛士):カルヴィン・リチャードソン メルセデス(街の踊り子):レティシア・ディアス キトリの友人:ソフィー・アルナット、前田紗江 二人の闘牛士:デヴィッド・ドネリー、ジョセフ・シセンズ ロマのカップル:ハンナ・グレンネル、レオ・ディクソン 森の女王:アネット・ブヴォリ アムール(キューピッド):イザベラ・ガスパリーニ ファンダンゴのカップル:ミーシャ・ブラッドベリ、ルーカス・B・ブレンツロド 上映期間:2024年1月26日(金)~2月1日(木)