台湾議会が紛糾、政府を監視する権限強化する法案可決 市民数千人が抗議
台湾立法院(国会)本会議は28日、政府を監視する立法院の権限強化などを盛り込んだ立法院改革法案を可決した。法案は多数派の野党が主導し、与党は反対したが、与党の議席が過半数割れしており阻止できなかった。法案可決を受け、立法院の周辺では何千人もの市民が抗議した。 法案では、立法院が適切と判断した情報の開示を、軍隊や民間企業、個人に求める権限が立法院に付与される。また、政府当局者による議会侮辱行為を犯罪とし、総統による立法院への国政報告が義務化される。これは台湾では初めてのことだ。 法案が可決されると、民進党議員らはブーイングをした。同党の議員らは、法案が適切な審議を経ずに強行採決された上、内容が曖昧であり、立法院の権限を逸脱しているとして反発している。 議会の外では何千人もの市民が抗議した。一部ではこの改革法案が中国に有利な動きだと捉えられており、「中国の政治介入を拒否せよ」と叫ぶ人もいた。抗議活動に参加した65歳のリー・スーイーさんは「次の世代のことを心配している。今の中国の政治を見てほしい。経済は悪く、若者は働きたくない。彼らは民主的な台湾と同じくらい良いだろうか」と語った。 中国が台湾の政治に影響を与えようとする動きに懸念が広がる中、抗議活動は行われている。中国は台湾を自国の領土とみなしており、新総統の頼清徳氏を「分離主義者」と非難している。頼氏は、台湾の将来を決めるのは台湾市民だけだとして中国の主権主張を受け入れず、繰り返し会談を申し出ている。 抗議活動は、頼氏が直面している厳しい政治状況を浮き彫りにした。頼氏は1月の台湾総統選で勝利したが、民進党は議会で過半数を維持できなかった。対中融和路線を打ち出している最大野党の国民党と第2野党の台湾民衆党が、合わせて最大議席を獲得している。