「欧州の病人」ことドイツ人の年間の平均病欠は約20日! なぜそんなに病欠するの?
ドイツで急増する病欠
ドイツ最大の健康保険基金であるテクニカー・クランケンカッセ(TK)の調査によれば、2023年の病気による欠勤日数が労働者ひとり当たり平均19.4日に達した。 【画像】多すぎる病欠によるドイツ経済への打撃、その額なんと4兆円以上? この数値は過去最高で、たとえば、同年の英国の5.7日と比較すると、約3.5倍にもなる。 しかも、2024年は「病欠が最も多くなるホリデーシーズン」前の最初の9ヵ月間だけで、平均14.3日の病欠日数を記録しており、さらなる最高記録が更新されるかもしれないと、米誌「フォーチュン」はTKの資料をもとに報じている。 ドイツ人の病欠による欠勤日数は、以前から多かった。 経済協力開発機構(OECD)のデータによれば、ドイツ人の欠勤日数はOECD加盟国中で最も高い。 ただ、他の国、たとえば、前述の英国は2022年の時点でも病欠による欠勤日数は5.7日でほぼ変化がないのに対し、同年のドイツは15日であり、年々増えていることを、同誌は指摘している。
病欠による経済打撃、その額4兆円以上?
2023年に続き、今年も2年連続でマイナス成長が見込まれるドイツ経済にとって、病欠の増加は深刻な負担となっている。 ドイツ研究基盤製薬会社協会(VFA)の発表によれば、ドイツ経済は2023年に0.3%縮小し、今年は0.2%縮小すると見込まれている。 ドイツの「2年連続のマイナス成長」は、景気低迷が長引いた2002~03年以来になる。 当時は景気低迷を理由に、ドイツは「欧州の病人」といわれていたが、現在は「病欠による景気低迷」を示唆する声から、新たな意味を加味して再び「欧州の病人」と呼ばれている。 VFAは、もしも平均を上回る病欠がなければ、2023年のドイツ経済は「0.3%の減少ではなく、0.5%拡大していただろう」と述べている。 これを別の言い方にすると、「ドイツ人のあまりに多い病欠が、ドイツ経済に約260億ユーロ(約4兆3000億円)の損失をもたらした」ことを意味すると、同誌は報じている。 そもそも、なぜドイツ人はそんなに病欠が多いのか? 背景には、ドイツの法律があるようだ。 同誌によればドイツでは、労働者が6週間の有給の病気休暇を取ることが認められている。 さらに、パンデミック中には、感染の拡大を防ぐために、少しでも体調が優れない際には欠勤するよう推奨されたことで、「病欠」に対する認識が変わり、以前よりも気軽に、たとえば「何となく出勤したい気分じゃない」などの場合にも、病欠を使う人たちが増えたとの指摘もある。 実際、一部の雇用主はこの制度に不満を抱いており、「特に若者の働く意欲が下がっている」などの声があがっている。 独紙「ハンデルスブラット」によれば、ドイツにあるテスラのグリュンハイデ工場の管理者らは、金曜日と遅番の勤務日は、他の曜日に比べて労働者の欠勤が5%多いと語っている。 製造部門責任者が英紙「ガーディアン」に語ったところによれば、「労働条件はすべての勤務日、シフトにわたって同じであるため、これは劣悪な労働条件を示すものではない」。 「これはドイツの社会システムが、国民によってある程度都合よく使われていることを示唆しています」 同工場は、体調不良で欠勤した場合、「管理者が予告なしに自宅を訪問して実際に病気で休んでいるかを確認する可能性がある」という新たな方針を発表している。他にも病欠急増に対する改善策を打ち出す必要性を感じている企業は少なくないようだ。
COURRiER Japon