保守のプリンセス・高市早苗がいよいよ総裁選へ…でも、彼女に「決定的に欠けている」ものがあった
足りないのはコミュニケーション力
さて、二年経って彼女はどう成長したか。 経済安全担当相として堅実に仕事をこなし、『日本の経済安全保障──国家国民を守る黄金律』(飛鳥新社)という本まで書いた。各地で開かれる講演会は千客万来。今や小泉進次郎と勝るとも劣らない自民党きっての人気弁士となった。 選挙ともなれば、令和三(二〇二一)年の衆院選でも翌年の参院選でも呼ばれれば、自らの選挙区にはほとんど戻らず、全国を飛びまわっている。 ところが、いざ総裁選となると、何もかも投げうって高市のもとに馳せ参じる議員が少ないのである。彼女自身、前回総裁選以降、国会議員の仲間を増やす努力をあまりしてこなかったのは事実。本人もジャーナリストの櫻井よしこに正直に語っている。 「この三年間、私が続けてきたのは、前回私を応援した方だろうが、別の候補者を応援した方だろうが分け隔てなく応援を引き受けてきた。『自民党が強くなるのだったら』と思って働いてきました。もうそれだけです。その他の努力はあまりしていません」(「言論テレビ」令和六年八月二日) そう。応援演説の依頼を断らず、快く引き受ける以外は、めだった多数派工作をしてこなかったのである。これでは勝負にならない。 大多数の派閥が解消された今、多数派工作といっても昔ほど難しいものではなくなってきている。 あるベテラン議員はこう語る。 「彼女の欠点は、自分から積極的にどっち付かずの議員どころか、高市シンパの議員たちも飲み会に誘わないことだ。呼ばれたら参加するわよ、という感じではどうしても親しみがわかない。要はコミュニケーション能力不足だ」 自民党のリーダーは、ある種の「土俗性」が暗黙のうちに求められてきた。言い換えれば、山賊の棟梁のようなエネルギッシュで、過剰なまでのコミュニケーション能力のある「土の匂いがする悪党政治家」が、個性豊かな議員たちを束ねてきた。 田中角栄を筆頭に、金丸信、渡辺美智雄、亀井静香らが典型で、現役では二階俊博といった政治家たちだ。 そんな彼らに比べると、彼女には、圧倒的に「悪党」力が足りない。