『ふてほど』でブレイクした河合優実が映画『あんのこと』で世界に魅せた「佐藤二朗との名場面」
今年1月期の金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』(TBS系)でブレイクを果たした女優・河合優実の快進撃が止まらない。 【写真あり】注目女優・河合優実が魅せた「ひざ下美脚」のセクシー姿 「『ふてほど』で、昭和のヤンキー高校生役を演じて『2024上半期ブレイク俳優ランキング(女性編)』(ORICON NEWS)の1位に躍り出た河合は、来年度上半期の朝ドラ『あんぱん』(NHK)ではヒロイン(今田美桜)の妹役を演じることが決定。朝ドラヒロインの姉妹役は、高畑充希や土屋太鳳、清原果耶の例を挙げるまでもなく、朝ドラヒロインへの近道です。 さらに昨年『ギャラクシー賞』テレビ部門の7月度月間賞を受賞した主演ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』(NHK BSプレミアム)も7月からNHK総合の“ドラマ10”の枠で再放送されるなど、今年のテレビ界を席巻する勢いを見せています」(ワイドショー関係者) 活躍の場は、ドラマだけにとどまらない。 主演映画『ナミビアの砂漠』が5月に行われたカンヌ国際映画祭で国際映画批評家連盟賞を受賞。レットカーペットを闊歩し、英語でスピーチを行うシーンは眩いばかりのオーラに包まれていた。 日本にとどまらず世界でも発見されてしまった逸材・河合優実。デビュー5年で20作品以上の映画に出演。その中でも最高傑作の呼び声が高い作品が、現在公開中の主演作品『あんのこと』ではないだろうか。 「21歳の主人公・杏(河合)は、幼い頃から母親に暴力を振るわれ、10代半ばから売春を強いられ過酷な人生を送ってきました。そんなある日、覚醒剤使用容疑で取り調べを受けたところから物語が始まります。 ’20年、コロナ禍に起きた事件をモチーフに命を絶ってしまう壮絶な“彼女の人生を、自分が生き直す”。その覚悟で臨んだ河合優実のリアリティにあふれる演技は、もはや同年代の女優の追随を許しません」(制作会社プロデューサー) 今作で杏の役を演じるために、実際にモデルとなった女性を知る新聞記者、薬物更生や介護の専門家にも取材を重ね、普通は出演者なしで行われるカメラテストにも参加。そうやって少しずつ、杏という女の子が過ごした時間と場所に体をなじませていく河合。しかも重要なシーンは何度もリハーサルを重ね、深く考える時間を持つことで、心から湧いて来る感情に身を任せる演技を手に入れていった。 「メガフォンをとった入江悠監督は、今作について『河合さんの肉体を借りて、モデルとなった女性が向き合っていた世界を、みんなで一緒に再発見していきたかった』『役者にとっては痛みを伴うやり方ですが、彼女は文字通り全身全霊で向き合ってくれた』。役を引き受ける覚悟も含めて河合優実でなければ、成立しない映画だったと話しています」(制作会社ディレクター) 撮影は’22年12月にクランクイン。“杏の人生を生き直す”ためにも、撮影はできる限り“順撮り”で進められ、今作のために入江監督自身も演出アプローチを一新。生きようとする切実な意志がいかに育まれ、どう揺らいでいったかにフォーカスを絞った。 そんな中、胸が張り裂けるようなシーンがやって来る。 小さな老人ホームで介護の仕事を見つける杏。初任給で手帳とヨガマットを買って団地に帰ると泥酔した母親に給料を奪い取られ、心が折れた杏は再び覚醒剤に手を出してしまう。 「雨の夜、橋の下で怯えるように泣きじゃくる杏。探しに来た多々羅刑事(佐藤二朗)が彼女を抱き寄せ身体をさすると、激しく嗚咽する心揺さぶられる場面が登場します。このシーンは本番直前に、全幅の信頼を寄せる佐藤さんの手を、河合が握るハプニングが起きました。杏を救ってくれた“一筋の光”、それが佐藤さん演じる多々羅刑事。彼との繋がりを感じたくて、佐藤さんの手を思わず握ってしまったようです。 この“予定外の出来事”がなければ、奇跡のように美しいあのシーンは生まれてはいないでしょう。河合も『二朗さんの手の温もりがあったから、ああいった感情の表れ方になった』と告白。このシーンの衝撃は、多くの人の心を今も揺さぶり続けています」(前出・ディレクター) 杏を演じて以来、役を演じるにあたって、 「杏が見ているから頑張ろう」 「モデルになった方も含めて、その人たちに恥じないように演じよう」 という感情に捉われる瞬間があると語る河合。この作品で、女優として新たな境地に足を踏み入れたことは間違いない。 憧れのゆりやんレトリィバァから、バラエティ番組で海外女優の「授賞式スピーチ」のネタを伝授され、モノマネしていた河合優実。海外で女優として賞を獲得する。そんな夢が叶う日は、意外と近いかもしれない――。 文:島 右近(放送作家・映像プロデューサー) バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。女子アナ、アイドル、テレビ業界系の書籍も企画出版、多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ケ原で死んでいた』(竹書房新書)を上梓。電子書籍『異聞 徒然草』シリーズも出版
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