「スーツを着た仕事がしたい」少年院の子どもたちをNPOが支援する意味
2015年6月に少年院法が65年ぶりに改正され少年院の様子が変わってきた。少年のパソコン指導に外部講師を積極的に活用したり、矯正教育に関わりがなかった人の見学を受け入れたりしている。少年院の担当者は「指導が多様化していく時代。外部の方がノウハウに優れていることもある」「少年の様子や矯正教育について関心を持ってもらうことが、将来的に少年を支えることにつながっていく」と意欲的だ。
たどたどしくタイピングする少年たち
3月中旬、茨城県牛久市にある「茨城農芸学院」では、午前の職業指導でパソコン講座が行われていた。同院は昨年10月、これまで行っていなかったパソコン指導を実施するため、若者の就労支援でパソコン指導の実績を持つ認定NPO法人「育て上げネット」(東京都立川市)に協力を依頼。両者の連携でパソコン講座が始まり、この日は16回目の講座だ。 女性の講師2人が9人の少年に、パソコンでの文章の入力方法や、表計算ソフトの使い方などを教えていた。教室の壁際に机を配置し、講師は後ろから画面の様子を見て指導する。講師は「なるべく指全部を使って文章を打って」などと呼びかけるが、ある少年は講師が配った見本の文章を入力するとき、人差し指や中指ばかりをつかっている。別の少年は「発展」を入力するときに手が止まった。入力のための綴りがわからないようだった。4度目の入力で「はってん」と打つことができた。
講師を務めた齊藤あずみさんは「ローマ字入力に時間がかかる少年も多いし、能力にもばらつきがあるため、講座を終えても実用的に使うところまでは至らないかもしれない。ただ、7~8回の指導を受けることにより、タイピングできる文字数は倍ぐらいには伸びます」と説明する。 少年の印象について、もう一人の講師・安江愛美さんに尋ねると、こう答えた。「これまで少年院の在院者への指導の経験はなかったが、話した感じは一般の若者とそれほど大差ないと感じた。むしろ、礼儀正しいなと思うぐらい。挨拶や話し言葉はしっかりしている」。