ハンセン病元患者「孫」の請求が棄却 当時の「胎児」は“補償金”を支給する権利を持たないとされる
ハンセン病元患者の家族も差別の被害を受けてきた
家族補償法の前文には「国会及び政府は、その悲惨な事実を悔悟と反省の念を込めて深刻に受け止め、深くおわびするとともに、ハンセン病元患者家族等に対するいわれのない偏見と差別を国民と共に根絶する決意を新たにするものである」と書かれている。 原告女性は、この文章を読んだとき、感動したという。 その一方で、祖父が収容されるのがあと10日遅れていたら自分にも支給する権利が発生していたこと、またそもそも祖父が収容されたのは隔離政策を実行していた国側の都合によるものであったことなどを考えると、理不尽にも感じた。 判決について弁護士が電話で報告したところ、女性は「お金が欲しくて請求したのではないし、必ずしも勝てるものではないとも思っていた。しかし、実際に判決を聞いてみたら、法律は自分たちのような立場の人間がいることを考慮していない、という思いが強まった」と語った。 原告代理人の内藤雅義弁護士によると、祖父は女性が中学生のときに死去したが、それまで祖父が生きていたことを女性が家族から知らされたのは祖父の死後だった。また、ハンセン病への偏見や差別のために家族は転居を余儀なくされ、女性の母親は周囲から堕胎を勧められていた。 女性は「自分自身が直接に差別を受けたことはないが、家族全体が人生を狂わされた」と考えているという。 判決でも、原告女性は「ハンセン病元患者家族として差別を受ける地位に置かれ得たものといえる」と認定されている。 「ハンセン病の家族がいるという事実が伝えられず、知らずに生きる人も多い。また、家族が崩壊した例もある」(内藤弁護士) 控訴については、原告と弁護団とで検討を行う予定。
弁護士JP編集部