救急隊員に聞く 熱中症のリアルな現場「およそ半数が屋内で発症」 身を守る秘訣とは
今年4月より環境省と気象庁が連携し、危険な暑さへの注意を呼びかける「熱中症警戒アラート」の運用が開始されていますが、今夏も30℃以上の暑い日々が続き、ところによってはアラートが発令されている地域も出ています。ふらつきを感じる「軽度」から、意識障害など重篤な症状である「重度」など命に係わるものまで、症状はさまざまな熱中症について、この時期は特に気を付けたいところです。 【画像11点】「夏のステイホームには、注意が必要です 。」熱中症の危険度を感じさせる、神戸市の熱中症啓発ポスター各種 神戸市では2023年、その熱中症関連で搬送されたおよそ8割が、7~8月に救急車で搬送されているというデータも。そこで、熱中症の現状と予防法について、神戸市消防局で救急隊員として日々現場で救命にあたる増田隆志さんに、ラジオ関西『サンデー神戸』パーソナリティーを務めるクマガイタツロウ(ワタナベフラワー)が聞きました。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 【クマガイタツロウ(以下、クマガイ)】 今年も本格的な暑さが始まりました。増田さんが実際に救助に行かれたケースを教えてください。 【増田隆志さん(以下、増田さん)】 熱中症は屋外の熱い場所で起こるイメージですが、およそ半数が屋内で発症しています。高齢者が暑い部屋の中で意識を失っているのをヘルパーさんが発見した例があり、「エアコン(の冷風)が寒い」と、エアコン(のスイッチ)をつけない高齢者の方が多いと感じます。エアコンをつけずに就寝し、起床後にめまいを感じた後、意識を失うというケースもあります。 【クマガイ】 改めて、熱中症とは、何が原因でどんな症状に陥るのでしょうか。 【増田さん】 熱中症は長い時間、暑い状況で体に熱がこもり、体温の調節機能がうまく働かなくなることにより発症します。症状としては、軽度ではめまいや立ちくらみ、こむら返り、大量の汗などがあげられ、重症では意識障害、けいれん、40℃を超えるような高体温などがあげられます。気が付かないうちに熱中症になっていることが多く、のどの渇きを感じる前に水分を摂取していただきたいです。 【クマガイ】 熱中症が発生しやすい条件について教えてください。 【増田さん】 高温、急に暑くなった日、風がない日などがあげられますが、蒸し暑い湿度の高い日も危険です。 【クマガイ】 えっ! 湿度が高いと身体が水分を得ているような気がするのですが、ダメですか? 【増田さん】 人は皮膚から水分を十分に吸収できません。水分は口から摂取してください。人は皮膚の汗が乾くことで熱を逃がしています。湿気で汗が乾かない日が危険なのです。 【クマガイ】 熱中症になりやすい人はどんな人ですか? 【増田さん】 すべての人に気をつけていただきたいですが、特に高齢者、乳幼児、肥満、基礎疾患があり体調の悪い人、暑さに慣れていない人などがあげられます。 【クマガイ】 熱中症を発症してから症状が重くなる前に応急処置として何かできることはありますか? 【増田さん】 まずは涼しい場所に移動し、横になって安静にしてください。身体を冷やすために、冷たいタオルや氷で、首や脇、内ももなど太い血管がとおっているところを冷やしてください。うちわや扇風機で皮膚の表面を冷やしてください。次に水分や塩分の補給が効果的ですが、自分で水を飲めない状況になっている場合、水を飲ませると窒息する可能性がありますので、無理に水を飲ませないでください。意識がはっきりしない場合はすぐに救急車を呼んでください。 【クマガイ】 知らないうちに発症し、意識を失ってしまう……熱中症は恐ろしいですね。それでは熱中症の予防法について教えてください。 【増田さん】 こまめな水分補給です。のどが渇く前に水を飲んでください。特に高齢者は体内の水分が少なくなっているうえ、体温調整機能が低下しています。室内にいても熱中症の危険がありますので、節電を意識するあまり冷房を我慢するなどして熱中症のリスクを上げないように気をつけましょう。そして、暑さに身体を慣らすことが必要です。暑熱順化(しょねつじゅんか)という言葉をご存じでしょうか。毎日30分程度のウォーキングをすることで、日ごろから汗をかく習慣を身につけましょう。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 救急車、救急隊員の数は無限ではなく、事故や急病など、考える余地なく救急車が必要な場合に対応できない状況はあってはならないため、症状が軽度の場合は救急安心センター事業の電話番号「#7119」(神戸では、「救急安心センターこうべ」)で相談してほしいといいます。そこで相談中、救急車が必要と判断された場合は、すみやかに救急車が手配されるとのことです。 また、神戸市は、「32℃の真夏日は、子どもにとって35℃の猛暑日でした。」「夏のアスファルトは、60℃近くになる。その熱は、ベビーカーをあたためる。」「熱中症で運ばれた。準備運動だけでは、準備不足だった。」などのキャッチコピーがつづられた熱中症啓発ポスターで、今夏も熱中症への注意を呼びかけています。 誰もが発症する可能性がある熱中症ですが、増田さんのお話のとおり、日ごろからの予防や対策などで防ぐことができるものでもあります。「このくらいは大丈夫!」と暑さを無理に我慢せず、こまめな水分補給や涼しい場所での運動習慣などで、酷暑といわれる夏をうまく乗り切っていきたいものですね。 ※ラジオ関西『サンデー神戸』より
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