『はたらく細胞』大ヒットスタート ますます高まるローカルプロダクション作品の重要度
学生が休みに入って、2025年の正月興行が本格的にスタートした12月第3週の動員ランキングは、清水茜原作の人気コミックを実写映画化した『はたらく細胞』がオープニング3日間で動員61万2000人、興収8億4500万円をあげて初登場1位となった。これまで『のだめカンタービレ』前後編、『テルマエ・ロマエ』シリーズ、『翔んで埼玉』シリーズとコンスタントにヒット作を手がけてきた武内英樹監督が、ヒットメイカーとして健在ぶりを示したかたちだ。 【写真】『はたらく細胞』場面カット(多数あり) 『はたらく細胞』は 、『映画 マイホームヒーロー』『陰陽師0』『ミッシング』『ブルーピリオド』『夏目アラタの結婚』に続く、今年6作目のワーナー製作・配給の実写日本映画。つまり、海外メジャースタジオ系配給会社によるローカルプロダクション作品ということになるが、とりわけワーナーは00年代後半からローカルプロダクションに注力をし続けてきて、確実に実写日本映画のメインストリームの一角を占めるようになってきた。 かつてはディズニー傘下に入る前の20世紀フォックスも邦画製作を手がけていたが、現在日本でローカルプロダクションを積極的に手がけているのはワーナーとソニーの2社のみ。その一方で、両社とも「本業」の洋画配給においてはこのところ苦戦を強いられている。特にワーナーは、北米をはじめ世界各国で大苦戦した『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』が不発だったのは致し方なかったものの、2024年(12月中旬現在)の全世界興収5位の『デューン 砂の惑星PART2』が最終興収7.7億円、同じく全世界興収10位の『ビートルジュース ビートルジュース』が最終興収3.8億円と、海外でのヒット規模と日本での結果のギャップが大きい作品が目立った1年だった。 もっとも、だからこそ会社や業態の存続のためにもローカルプロダクションの重要度は上がってきているとも言えるだろう。今年、ワーナー本社はクリント・イーストウッドの引退作になるとも言われている『陪審員2番』の世界公開を見送って、傘下の配信プラットフォームMAXで配信公開(北米マーケットでは数十館での限定公開、ヨーロッパ・マーケットでも限定された数ヶ国のみでの公開)するという判断を下した。これまでワーナーに散々貢献してきたイーストウッドの新作でさえそんな酷い扱いをされるのだから、現在のハリウッドのメジャースタジオの苦境を考えると、今後もさらに予想もできないようなことが起こるに違いない。そんな中にあって、日本のワーナー支社にとっては、ローカルプロダクションで培ってきたこれまでの蓄積が命綱となるかもしれない。
宇野維正