『ブギウギ』趣里が歌うことで増す「東京ブギウギ」の魅力 第1話シーンの驚きの再撮影
朝ドラ『ブギウギ』(NHK総合)第91話では、スズ子(趣里)が「東京ブギウギ」を披露する第1話に戻ってきた。追いついたと言うべきだろうか。初回のフックとして、スズ子が娘の愛子をりつ子(菊地凛子)に預け、楽屋に善一(草彅剛)が迎えにきた後、誰もが知る名曲「東京ブギウギ」をパフォーマンスするという一連のシーンはすでに放送されていた。 【写真】完成した「東京ブギウギ」の楽譜を受け取る趣里 筆者も「懐かしいな」などと思いながら感慨深く本放送を観ていたのだが、『あさイチ』(NHK総合)の“朝ドラ受け”で、先にNHK BS(午前7時30分からの放送)で観ていた博多大吉が慌ててNHKオンデマンドで第1話を確認し、「微妙に違う」「たぶん撮り直してる」と言い出すものだから自分もNHKオンデマンドで早速再視聴を始めた。『ブギウギ』がスタートして4カ月。人の記憶とは曖昧なもので、第1話と比べると微妙にどころか結構違う! 第1話の愛子ちゃん、髪ふさふさ! どうやら楽屋からステージシーンまで全てが再撮影のようだ。 それは趣里、菊地凛子、草彅剛がそれぞれの役を再解釈し、今の芝居を自由に楽しむということでもある。例えば、長いつけまつ毛をつけ、メイクが完成したスズ子の「よっしゃ! 福来スズ子の出来上がりや!」というセリフ一つをとっても久々のステージに立てる喜びが、愛子の子守りをするりつ子からは田舎の母親に自身の子を預けている少しばかりの罪悪感とだからこその愛情が、「さぁ行こう! トゥリー、トゥー、ワン、ゼロ!」とスズ子をステージへ誘う善一からは「東京ブギウギ」を早く演奏したい、そしてスズ子の歌が聴きたいという高揚感がより伝わってくる。 印象的なのは幕が上がる直前、袖でスズ子が目を閉じるシーン。脳裏に浮かぶのは愛助(水上恒司)と過ごしたつらく、けれど幸せな日々。日帝劇場にスズ子が帰ってくることを心待ちにしていた愛助の「福来スズ子の歌には力がある」という言葉を胸に、スズ子はステージへと勢いよく飛び出していく。 ここまで幾多のステージを重ねてきた趣里のパワフルな歌声、伸びやかなダンスが素晴らしいのは言わずもがなだが、スズ子にとっては天国にいる愛助、そして大切な愛する娘・愛子に向けたパフォーマンスということも大きいだろう。新たな一歩を踏み出す、愛子と生きていくという決意表明の歌。だからこそ「ズキズキワクワク」という歌詞が説得力を持ち、戦後間もない日本に生きていく活力を与えたとも言えるのだ。とびきりの笑顔を浮かべるスズ子に、愛助もキラキラした瞳で大きな拍手を天国から贈っているはずだろう。 スウィングの女王からブギの女王として時代のスターに駆け上がっていくスズ子。一方で第91話ではタイ子(藤間爽子)がみすぼらしい格好で再登場していた。芸者となったスズ子の幼なじみである彼女が、新章に突入する第20週「ワテかて必死や」でのストーリーのの一つの軸になっていきそうだ。
渡辺彰浩