ソフトバンク柳田悠岐の代役候補は背番号を受け継いだ〝ポスト・ギータ〟 2軍での成績は準備万端「1軍で打てる自信がつくように」
◆ウエスタン・ソフトバンク10―6阪神(1日、鳴尾浜球場) ソフトバンクの絶対的存在・柳田悠岐が長期離脱を余儀なくされた。その中で〝ポスト・ギータ〟に名乗りを上げたのは、柳田がルーキー時代の2011年から4年間つけた「背番号44」を継承する4年目・笹川吉康外野手(22)だった。 ■4回2死二塁、右越え2ランを放ちダイヤモンドを回る笹川(撮影・永田浩)【写真】 「2番中堅」でスタメン出場すると、1回に中前打、3回に左翼フェンス直撃の二塁打、4回にはライナーで右翼席へ一直線に飛び込む2号2ラン。三塁打が出ればサイクルだったが、続く2打席は四球を選ぶ冷静さも見せての5打席全出塁だった。身長1メートル93、体重95キロは、本家よりも身長で5センチ、体重でも2キロ上回る。大型の〝ギータ2世〟は「(1軍に)行けるとすれば、それに越したことはないです」と、柳田不在でぽっかりと穴が開いた野手枠を見据え、初の1軍昇格を今、虎視眈々(たんたん)と狙っている。 4回の2ランは、阪神・津田の初球、129キロのスライダーを捉えると、甲高い打球音を残したライナー性の鋭い一撃は、右翼席へ一直線に飛び込んで「手応え十分? はい、そうですね」。一回の中前打も初球打ち、三回の二塁打もファウルの後の2球目を逆方向に運んだもので「今、つかんだものはあったんで、これを継続できればと思っています。1軍で打てる自信がついていけるように、という感じです」と打率も2割6分4厘から、この日の3安打で一気に2割7分8厘へと上昇。それでも「3割は打ちたいです。安定はしてきていると思います」と現状に満足せず、さらに上を目指すという貪欲さをぎらつかせた笹川に、松山2軍監督からの〝注文〟は、好不調の波を小さくすることだった。 「状態のいい時って、みんないいんですよ。それは当たり前。悪くなった時でも、どれだけ自分のいい状態に持っていけるか。悪い中でもどうやってアベレージを残し、結果を残していくかということをよく考えないといけない」 その〝指標〟となるのが「打率3割」だと指揮官は言う。交流戦開幕に合わせて昇格した柳町は、ファームでの40試合で44安打、打率3割3分3厘のハイアベレージをキープしてきた。柳田の戦線離脱に伴って育成から支配下契約に切り替わった佐藤直も、ファームでの34試合で打率3割4分。二塁打7、三塁打3、本塁打2、盗塁も10と、高いレベルで数字を残し続けてきたことが評価されている。「3割をずっとキープできるということは、それだけ波がないということ。やっぱり2軍では最低でも2割8分から3割は打てないと。波の大きい選手になると、どうしても1軍からのチャンスもなかなか難しくなる」と松山2軍監督。その最低条件ともいえる〝1軍昇格打率ゾーン〟に、笹川も入ってきているのだ。 「今日の感じはよかったんですけど、今までの感じだと(1軍に)行っても、すぐに落とされるような感じだったと思う」と笹川も、その〝調子の上下動〟を抑えることが課題なのは百も承知。昨季までの3年間で、ファームでの通算打率は2割3厘。パワーとスピードの潜在能力は誰もが認めながらも、安定したパフォーマンスを欠いてきた。この日も三塁打が出ればサイクルだったが、6回と9回は2打席連続四球。その〝打ちたい〟という気持ちを抑え、冷静に出塁できた姿勢は、成長の証しでもある。「笹川の場合はいい時はいいけど、試合になったらまたダメになったりすることもある。そこも彼にしてみれば、これからが経験です」と松山2軍監督。〝ギータ2世〟と呼ばれ続けてきた逸材が、チームの一大事の中で、そのベールを脱ぐ準備が整ったようだ。
西日本新聞社