判決の日、青葉真司被告の声は「(被告人質問の)饒舌なトーンと打って変わって、ほぼ聞こえなかった」143日間の法廷取材記【ドキュメント京アニ裁判㉑】
「非業の死を遂げた被害者らの恐怖」1時間半かけて量刑を読み上げた
続いて、増田裁判長が判決文を読み上げる。量刑の部分だけで、約1時間半にも及んだ。 「突然一瞬にして、さながら地獄と化した第1スタジオにおいて炎や黒煙、熱風などに苦しみ、その中で非業の死を遂げた被害者らの恐怖、苦痛は計り知れず、筆舌に尽くし難い」 「遺族らは理不尽にも、かけがえのない家族を奪われた。その悲しみや苦しみ、喪失感や怒りは例えようのないほど深く大きい。極刑を望むことも至極当然」 「被告は、『自分がしたことの大きさから目を背けることが多い』と述べるなど、遺族や被害者らの感情を逆なでするような表現で発言しており、被害者らの実情に十分向き合えていないと言わざるを得ない」
開廷から約3時間後に「主文」言い渡し
午前10時半の開廷から3時間あまりが経過した、その瞬間だった。増田裁判長が一呼吸置くと、法廷の緊張感が一気に高まった。 「主文、被告人を死刑に処す」 主文は2回読み上げられた。143日に及ぶ審理の末に下された判決をいち早く伝えようと、次々と記者たちが外に出る。その間、青葉被告は微動だにせず動揺する様子は見せない。増田裁判長から「よろしいですね?」と尋ねられると、青葉被告は深々と頭を下げ、うつむいたまま退廷した。 判決が読み上げられている間、涙する遺族らも多くいた。全ての裁判を傍聴取材してきた京都支局の取材班も、法廷でこれまで述べられた遺族の言葉などが次々と頭に浮かび、ノートに書き取った文字が滲んでいったことを思い出した。 法廷のやりとりを20篇以上に書き残した「ドキュメント京アニ裁判」。詳しく伝えてきた青葉被告の生い立ちや経歴は決して「特異」なものでなく、誰にもあり得る環境だと言えた。143日間の裁判で明らかになった事実と、問われた課題を社会全体が共有して、犯罪再発を防ぐ糸口にしていかなければならないことを、私たちも強く感じている。 裁判の行方については、1月26日に青葉被告の弁護側が判決を不服として控訴。さらに京都地裁によると、2月7日付で青葉被告本人からも控訴があったという。京都アニメーション放火殺人事件は、続いて、大阪高裁で争われることになる。(MBS報道情報局 京都支局 森亮介 國土愛珠 宮腰友理)