キミはMGマグネットを知っているか? 今は中国ブランドになったMGが手掛けたスポーティ・サルーン
オートモビル・カウンシル2024に出品
イギリスを代表する名門ブランドのひとつである「MG」のクルマといえば、「MG A」、「MG B」、そして、「MGミジェット」が圧倒的に有名だ。そのため、2座オープン・スポーツカーのイメージが強いが、実は1962年にデビューしたADO16シリーズの「1100/1300」のような魅力的なスポーティ・サルーンもリリースしていた。 【写真10枚】オートモビル・カウンシル2024に出品されていた、かつてはイギリスを代表する名門ブランドだったMGが1950年代に導入したスポーティ・サルーン、「MGマグネット」の詳細画像をチェック ◆MGブランドの傑作スポーティ・サルーン 筆者は1971年生まれなので、クルマ好きによるクルマ好きのための筆記試験にMGブランドの傑作スポーティ・サルーンは何? という設問があったら間違いなく「1100/1300」と回答してしまうが、筆者の先生世代にあたる自動車趣味の先輩たちは、きっとそれに×をつけるはずだ。 パイセンたちが求めている正解は1953年のロンドン・モーターショーで発表された「MGマグネットZA」だ。1956年に登場したマイナーチェンジ版の「マグネットZB」と書き込んでも、おそらく〇をつけてくれるだろう。 ◆ベースモデルはウーズレー4/44 MGとしては初めてモノコック・ボディを採用したMGマグネットZAのベースとなったのは、ナッフィールド・グループ時代から同じ傘下にあったBMCグループ内の「ウーズレー4/44」である。 MGマグネットZAはウーズレー用よりも高性能な排気量1489ccの4気筒エンジンを搭載していたので走りの質が高く、4/44のそれよりも低められた美しいルーフラインやラック&ピニオン方式のステアリング機構がもたらすスポーティなハンドリングも高評価を得て、市場からMGの傑作スポーティ・サルーンとして受け入れられた。 ◆MGらしいスポーティな味つけ 発売当初こそ、ウーズレー4/44のフロント・マスクにMGのグリルを装着しただけのBMCお得意のバッジ・エンジニアリングによって生まれたセダンでしょ、といったニュアンスで、熱心なMGファンの間で賛否両論となったが、各部にMGらしいスポーティな味つけが施されていたことが分かると一躍人気車となった。 MGがスポーティ・サルーンをつくるとこうなる、MGブランドのスポーツカーからファミリーカーに乗りかえる人のためのクルマ、といった称賛の声を浴びたMG マグネットZAは、1956年にエンジンをパワーアップしたマグネットZBに発展。1958年まで生産され、マグネットMk IIIへのモデルチェンジ時に引退した。 ◆1958年式のMGマグネットZB 去る4月12日~14日までの日程で開催されたオートモビル・カウンシル2024にて、ヴィンテージ宮田自動車が展示していたのは1958年式のMGマグネットZBで、トランスミッションがフロア4段MT、キャブレターがSUツインで、アポロウインカーはしっかり可動。そのほか、シートの張替えが特筆すべきポイントで、純正のステアリング、ホイールキャップ、ルームミラー、タコメーター、フェンダーミラー、フォグランプ、電動ファン、リア・ウインカーを装備というスペックであった。 税込車両価格が330万円というリーズナブルなプライスだったが、稀少なMGマグネットZBながら内外装機関良好で、ヴィンテージ宮田自動車のスタッフによると、元からコンディションがよく、大規模なリセット作業を実施しなくても販売できたので、そのような値付けになったそうだ。物凄くお買い得だと思うので、これからクラシックカーに乗ろうと思っているビギナーのみならず、よさげなスポーティ・サルーンを増車しようと思っているベテランにもオススメの一台だった。 文・写真=高桑秀典 (ENGINE WEBオリジナル)
高桑秀典