オーストラリアから誕生! ファンタジー・ムービーのニューカマー、「シークレット・キングダム ピーターの奇妙な冒険」の隠された魅力
視覚効果まで手掛ける新鋭監督のマルチな才能
本作はオーストラリア映画であり、メジャースタジオの潤沢な資金を投入された大作でもない。しかし制作者の情熱とアイデアが詰まった快作であり、映像の肝であるCGIのレベルが驚くほど高い。 センザンコウ族の表情、鼻の頭の湿った感じ、口の周りの産毛のモフモフ感などは大型高画質テレビで見ても充分にリアルだ。恐竜メンダックスも近年の考古生物学の成果を取り入れて、ふさふさの羽毛が全身に生え、とても柔らかそうな質感が描かれている。 ピーターの前に立ちふさがる敵、歯車仕掛けのロボット兵士や、鉄と鎖で構成された手袋の戦士たちも緻密なCGIによって、まるで生き物のように動いている。そのCGキャラたちの独特のキモカワ感覚は、ハリウッド・メジャー映画にはないオーストラリア映画の個性として本作を際立たせている。 こうした質の高いCGIが可能だったのは、監督・脚本を手掛けたマット・ドラモンドがCGI製作会社の設立から映画界でのキャリアをスタートさせているからだ。ドラモンドは本来、視覚効果の監督で本作以前にも多数のテレビ番組などに関わり、映画作品では「ジュラシック・アイランド」(2014)や「セイブ・ザ・ダイナソー」(2017)でも素晴らしい恐竜のCGIを手掛け、監督も兼任してる。 ドラモンド自身がストーリーを考案し、脚本も書いた「シークレット・キングダム」は彼の頭の中にある冒険物語を、最高レベルの視覚効果技術で現実化したものといえるだろう。また、物語の最後に明かされる、主人公ピーターが経験した重いドラマは、もしかするとドラモンド自身の生い立ちに由来しているのかもしれない。
妹役女優の新作は「マッドマックス:フュリオサ」
純白のドレスが美しい(実は彼女の服もひとつの伏線になっている)妹・ヴェリティ役のアリラ・ブラウンはシドニー生まれ、子役として才能を開花させた。本作のほか、シガニー・ウィーバー主演のドラマシリーズ「赤の大地と失われた花」(Amazonプライム)にも出演、2024年5月公開の超大作「マッドマックス:フュリオサ」では伝説の女戦士フュリオサの少女時代を演じている。ハリウッド・メジャー作品での活躍が待たれる大器として、本作の彼女を目に焼き付けておくといい。 さて、本作を最後まで観終わったら、もう一度オープニングから観直してみてほしい。そこには、あっと驚く仕掛けが隠されており、映画の感動もひとしおになる。リプレイはDVDならではの楽しみ方、ぜひご覧いただきたい。 文=藤木TDC 制作=キネマ旬報社
「シークレット・キングダム ピーターの奇妙な冒険」
●3月20日(水)レンタルリリース ●2023年/オーストラリア/98分 ●監督・脚本・プロデューサー:マット・ドラモンド ●編集:トレント・ミッチェル ●出演:サム・エヴァリンガム、アリラ・ブラウン、アリス・パーキンソン、ベス・チャンピオン、クリストファー・ガバルディ © 2022 LITTLE MONSTER PRODUCTIONS PTY LTD. ALL RIGHTS RESERVED. ●発売・販売元:アメイジングD.C.