さっそく大統領令 トランプ氏は「独裁者」になるのか?
すぐ反応して妥協する相手は「カモ」
トランプ大統領は得意のツィッターなどを駆使して、交渉の主導権を握るべく、各国に対して相変わらず高い要求を突きつけてくるかもしれない。そして、それに対して、他国の反応の連鎖が起き、過剰反応した国とトランプ大統領の間で舌戦が展開されるという図式も十分予想される(共和党の予備選と同じ構図だ)。 基本的に、こうした不透明かつ流動的な状況下では、性急な反応や行動は控えるのが賢明だろう。足元を見られる、あるいは他国を揺さぶるカードとして利用されかねない。トランプ大統領の著書や評伝を読むと、自らの交渉カードにすぐに反応し、妥協してくる相手を「カモ」とみなす傾向があるようだ。日本としては情報のアンテナを高く張りながらも、当座の状況がある程度落ち着くまではやや静観し、交渉のカウンターパートを冷静に見極める態度が肝要かと思われる。
全米各地で悲鳴にも似た抗議デモ
新政権発足から最初の100日間は対立よりも協調が重んじられる「ハネムーン期間」と称される。しかし、ロシアとの不可解な関係、利益相反の問題などは、今後もメディアや民主党が厳しく追及するであろう。肝心要の経済政策が期待通りの成果を上げない場合、共和党内の求心力は一気に低下しかねない。 ただでさえ、党内にはトランプ大統領に対する不信がくすぶっている。選挙戦では議会多数派を維持したものの、上下両院とも議席数は失っている。トランプ大統領に強い恩義や義理を感じている議員は少ない。2018年秋の中間選挙で敗北すれば、共和党のポール・ライアン下院議長やテッド・クルーズ上院議員らが2020年秋の大統領選へ向け始動する公算が高い。 当選後、トランプ大統領の支持率は改善傾向にあるが、それでもこれまでの政権に比べると極めて低水準にあることは確かだ。民主党の議員が60人以上も就任式をボイコットし、全米各地で悲鳴にも似た抗議デモが起きるなど、政策環境が良いとはお世辞にも言えない。トランプ大統領への不信はわずか16分の演説で改善できるレベルではない。物事がうまく進まないと、メディアや特定企業、民主党、あるいは共和党に責任を転嫁するという、得意の手法に訴えるのかもしれないが、同氏の熱心な支持者にでさえ、それがいつまでの神通力を持つわけではない。願わくは、選挙予測同様、こうした悲観論がすべて誤りであることだ。