『おむすび』菅生新樹の豊かな表情が生む親近感 不憫な“幼なじみ枠”を脱却できるか?
NHK連続テレビ小説『おむすび』に主人公・米田結(橋本環奈)の幼なじみとして出演しているのが菅生新樹だ。まだ放送開始から2週間しか経っていないが、すでに存在感を放っている。何がいいのかと言われると、とにかく表情がいい。しかし、彼のキャリアを見てみると、まだ俳優デビューから2年しか経っていないというのだから驚きだ。 【写真】『下剋上球児』でも球児に扮した菅生新樹 『おむすび』で菅生が演じているのは、結の幼なじみでクラスも一緒の古賀陽太。天真爛漫な性格で優しいまなざしが印象的で、糸島の自然のなか、伸び伸びと育ったことを感じさせる。『NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説 おむすび Part1』(NHK出版)で菅生は、「出てくると『クスッ』と笑わせてくれるようなかわいさがあり、大人になっても童心を忘れない天真爛漫さは、僕がもっとも愛している陽太の魅力です」と語っている。 幼なじみという立ち位置は朝ドラには欠かせないが、不運な運命を辿りがちだ。第1話での結との会話シーンを見る限りでは恋人関係に発展するとは思わなかったが、実は結を気にかけていることが発覚。野球部の試合に1年生ながらに出演が決まると、米田家を訪れて結に「絶対にホームランを打つ」と宣言した。結といるときは常に朗らかな表情を見せていた陽太のキリッとした表情が絶妙だった。 このシーンを見て思い出したのは『下剋上球児』(TBS系)での野球部主将・日沖誠役だ。野球経験はないが、圧倒的な存在感で部員をまとめていた日沖。陽太が結に向けたまなざしからは日沖とも重なるものがあった。2022年から本格的に俳優として活動を始めた菅生は、2022年に『初恋の悪魔』(日本テレビ系)で境川警察署の雪松署長(伊藤英明)の息子・弓弦を演じた。第8話からの登場となったが、視聴者を恐怖に陥れる豹変ぶりで強烈な印象を残した。
2023年には、デビューから2年目にして『凋落ゲーム』(フジテレビ系)でテレビドラマ初主演という大役を経験。SNSで人気を集めるインフルエンサーであり、若手起業家の主人公が、何者かに脅迫されゲームに巻き込まれていくというスリリングな展開の本作において、菅生はファッションサブスクリプションサービスを運営する若手起業家・守口奏多を演じた。本作での菅生は焦ったり、パニックになったり、怒ったり、さまざまな表情を見せ、人間らしい喜怒哀楽を体全体を使って表現する菅生の渾身の演技は観ていて心がえぐられた。彼が作り上げたキャラクターは私たちのすぐそばで息をしているかのような親近感があり、非常に味わい深い。 今年に入ってからも『ぼくの人格シェアハウス』(カンテレ)や『パーセント』(NHK総合)など出演作が続いているが、中でも『伝説の頭 翔』(テレビ朝日系)の好演はまだ鮮明に残っている。菅生は、不良チーム「グランドクロス」の副長で、“カリスマヤンキー”伊集院翔の右腕を務める大門伝助を迫力たっぷりに演じ、硬派な演技で新たな一面を見せた。 『おむすび』で幼なじみという重役に抜擢されたのはこれまでの経験が実を結んだ結果と言える。近年の朝ドラの幼なじみと言えば、『おかえりモネ』の亮(永瀬廉)や、『カムカムエヴリバディ』の勇(村上虹郎)などのように、恋心を寄せつつもヒロインは別の誰かと結ばれるケースが多い。現時点では風見(松本怜生)と翔也(佐野勇斗)がライバル候補として立ちはだかっているが、まだまだどうなっていくのかは分からない。陽太の熱い思いが結の心を動かす可能性も十分にあるだけに、今後の陽太の頑張りに期待したいところだ。
川崎龍也