【独自】河井克行元法相「お金を渡したが、悪いという意識なかった」 倫理感、金銭感覚の違いが浮き彫りに
広島ニュースTSS
今年もたびたびクローズアップされた「政治とカネ」の問題。 今月、3年前の参院選をめぐる大規模買収事件が一つの区切りを迎えました。 元法務大臣が有罪となった前代未聞の事件、改めてあの事件が及ぼした影響を考えます。 <VTR> 衆議院広島3区から選出され、法務大臣を務めていた河井克行氏。 2019年の参院選で妻の案里氏を当選させる目的で、地元議員や後援会幹部ら100人に総額およそ2900万円を渡し、買収した罪で東京地検特捜部に起訴されました。 裁判では議員の間で「餅代」「氷代」といった名目で日常的に金銭の受け渡しがあった実態が明らかに…。 初公判で克行氏側は地方議員に渡していた現金は「陣中見舞いだった」と無罪を主張していました。 しかし… 【河井克行氏(吹替)】 「参院選で自民党が2議席を獲得する大方針のために、妻・案里の当選を得たい気持ちが、全くなかったとは言えない」 途中で一転して買収目的を認め、懲役3年の実刑判決が下されました。 また、案里元参議院議員も懲役1年4か月執行猶予5年の有罪判決を受けました。 一方、現金を受け取った地元議員らについては…。 東京地検は克行氏が強引に現金を渡すなどしていて、いずれも「受動的な立場」だったとして100人全員を不起訴処分にしたのです。 しかし、市民団体などが処分を不服として、検察審査会に審査を申し立てたことで広島地検が改めて34人を起訴。このうち12人が法廷で争うことになりました。 裁判を通して検察の捜査手法が問題視される事態にー。 (録音テープ) 【取り調べする検察官(吹き替え)) 「できたら議員続けていただきたいと思ってるわけで、そのレールに乗って貰いたい」 【取り調べを受ける木戸元広島市議(吹き替え)】 「そのレールに乗れるように、よろしくお願いします」 木戸経康元市議が検察が不起訴をちらつかせて罪を認めさせようとする様子を録音したデータの存在を明らかにしたのです。 【木戸経康元市議】 「自分自身が言ってもないことを言ったとかやってもないものをやったとかいうのを何回も何回も繰り返されたので」 しかし、そのデータは裁判所に証拠として採用されることはなく、木戸元市議は有罪判決を受けました。 【渡辺典子元県議】(YouTube投稿) 「通常の寄付金を、選挙協力のお礼も含まれると意味づけられたことは今でも納得はできません」 ほかの元議員たちも無罪を主張しましたが、今月までに12人全員の有罪判決が確定し、一連の裁判は幕を下ろしました。 <スタジオ> TSSでは、現職の県議と広島市議合わせて114人と正式裁判となった元県議など12人にこの買収事件や政治とカネに関するアンケートを実施しました。 まず、正式裁判となった12人のうち、回答があったのは石橋竜史氏、谷口修氏、矢立孝彦氏の3人。そのほかの9人からは回答がありませんでした。 一部ご紹介しますと、石橋氏は「河井氏から封筒を差し出してくる行為が常態化していた」と明かしつつ、「選挙の手伝いで金員が発生したことは一度もない」と回答していて、谷口氏も「案里さんの選挙に一切かかわっていない」としていて、有罪とされた元議員は今でも買収について否定していることがわかりますね。 では次に、現職の議員におこなったアンケートを見ていきます。 回答があったのは29人でした。 「政治に金は必要ですか」という問いに対し、「必要」と答えた人は6人。また、「どちらとも言えない」と答えた人は14人、「必要ではない」と答えた人は8人でした。 理由を見てみますと、「政治活動にはある程度の資金が必要。現行の制度では選挙の立候補にお金がかかる」といった意見から、こちらには「業務上の経費以外は必要ない」と書かれています。 また「大切なことは資金の流れを明確化し、透明性を確保すること」だという意見もありますね。 さらに、この政治とカネの問題。 広島県政界でその後、変化があったかどうかを聞きました。 「変化がある」とした人は17人。「ない」と答えた人は7人でした。 「変化があった」と回答した人の多くは、「市民の厳しい目を感じる」といったような理由を述べている人が多い結果となりました。 ここまでアンケートをご紹介しましたが、この大規模買収事件の当事者・河井克行元法務大臣にTSSは先日、単独インタビューを行いました。 <VTR> 【河井克行氏】 「私自身が政治不信を惹起してしまった張本人の1人ですからね、あまり語るべきでもないし、語る立場でもないというふうに思いますけれども」 今月中旬、都内でTSSの単独インタビューに応じた河井克行氏。 河井氏は仮釈放され、地元で支援者などを回っていた今年2月にもインタビューに応じていました。 「4年3か月ぶりに選挙区に戻ってきて、本当に申し訳なかったなというふうに思いながら、ずっと回ってます」 あれからおよそ10カ月。 懲役3年の実刑判決は10月に満了となり、今は複数の会社で顧問を務めるなどして生活しているということです。 およそ2時間にわたって公職選挙法違反の罪に問われた一連の買収事件について語りました。 「妻の参議院選挙のお金ということとは一線を画して、私自身の政治活動ということで、陣中見舞いとかそれから当選祝いというような形で、地元の県議さん市議さんにお金を差し上げました。だから決して悪いことをするっていう意識は、これっぽっちもなかったですね」 裁判では認めた買収の意図を否定する河井氏。 買収された罪に問われた元議員などには検察による供述誘導があったと訴えます。 「私は最高裁まで戦った先生方には敬意を表します。一方でね、地方議員の先生方、なんで真実を、河井克行の法廷でおっしゃっていただけなかったのかと」 買収とする基準についても法律に不備があると指摘したうえで、法改正の必要性についても言及しました。 「これまでは自民党支部から自民党支部にお金の移動というのは、全く合法だと言われてきて、例えばですよ、もう投票日の6ヶ月前は、いかなる名目でも、政党の支部同士の間であっても、お金のやりとりはしないぐらいのことを決めないと、第2第3の河井克行、つまり捜査当局が恣意的に、その時々の判断で、これはいいですよ、これは違法ですよというふうに、判断できる余地がかなりあるんですよ」 Q:改めて有権者に説明する場を設けるために会見を開く予定はない? 「もう私としては、3年間の実刑判決を受けて、2年1ヶ月実際に服役をしまして、その刑期も満了をいたしました。その自分自身を今の姿を見ていただくことが最大のいわゆる『説明責任』だと思っております」 広島県の政界から国政までをも揺るがす事態となった一連の裁判。 刑事訴訟法などが専門の広島大学大学院・吉中信人教授は、事件の与えた影響は大きかったと振り返ります。 【広島大学大学院・吉中信人教授】 「元法務大臣が、ある意味率先してこういう買収行為をして、それを受け取った側も被買収ということで、日本の歴史で見ても、非常にこれは大きな事件だったと思います」 また、政治に金が必要であることに理解を示しながらも、餅代や氷代といった名目で議員の間で高額な現金が日常的にやり取りされることが事件の根幹にあると指摘します。 「(国民と政治家の)金銭感覚の違いというものが、やはり浮き彫りになった。『これは昔からやってきたことなんだ』といったような安易な考え方というものが、やっぱりこれ許されないんだよということが、この一連の事件において改めて司法から出されたメッセージだと思う」 政治家には市民より高い倫理観が必要だと強調する吉中教授。 自分の行動を俯瞰して見ることが求められていると分析します。 「紛らわしい時期に紛らわしいお金を渡すということは、『そう(買収の意図があった)とみられても不思議ではないよね』ということになると思う」 <スタジオ> 「政治とカネ」の問題、この事件を経た後もまだちょっとひきずってますよね。 【ゲスト:映画監督・信友直子さん】 「私がすごくびっくりしたのは、(河井元法相は)10カ月経つと、すごい、ツルっとして出てきたなと思って。全然、事件前とあんまり印象変わらないですよね、河井さん。反省っていうとあれだけど、服役してる間に何を考えて、今いるのか。結局、裁判と違うことを言って『僕の陣中見舞です。お金を差し上げました』と悪びれずに言うのは『あれっ』と、ちょっと思いましたね」 信友さんがおっしゃるような、いわゆるこの市民感覚というところが、今の政治とまだやはり乖離しているところがあるというところを改めて感じる。 政治家を選ぶ選挙というのは有権者、私たちですから、改めて選挙ではしっかりと吟味して考えて投票に繋げていきたいと思いました。
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