BUCK-TICK、The Birthday、NEE、ヒトリエ……ボーカリストを喪ってなお歩み続けるバンドの足跡
バンドの魅力のひとつに、代替の効かない、特定のメンバーだからこそ起こるシナジーがある。彼らにしか生み出せなかった奇跡的な現象の積み重ね。それこそがバンドの尊さであり、多くの人々がバンドという生き物に魅了される理由でもある。 【画像】BUCK-TICKのライブ模様 願わくば、彼らの活動がずっと続いて欲しい。特定のバンドに対しそう思う人々も大勢いるが、現実はそう甘くない。音楽性や価値観の相違による脱退・解散のみならず、時には本人たちの意志すらお構いなしに、ある日突然メンバーとの永遠の別れに直面するバンドも、これまで数多く存在している。 中でもやはりショックなのは、バンドの“顔”であるボーカリストの訃報だろう。アイデンティティを喪ったバンドが、活動を諦めることを責める人間はおそらくいない。だが、それでも歩き続けることを選ぶバンドもたくさんいる。その道程は様々だが、永久に喪われるはずだった物語の続きが紡がれる奇跡もまた、より人々を惹きつける当該バンドの魅力にもなるのだ。 そこで本稿では、大黒柱たるボーカルを喪ってなお進み続けるバンドたちを、直近の活動トピックスとあわせて紹介。生き様と呼ぶに相応しい様々なバンドの軌跡を、ぜひその目で確かめて欲しい。 ■BUCK-TICK 近年のボーカリストの訃報として、特に印象的なのは昨年秋。BUCK-TICK・櫻井敦司の急逝は、ライブ中の体調不良からそのまま帰らぬ人となったこともあり、多くの人々にとって信じがたい一報だったに違いない。 デビューから35年以上共に歩んできたメンバーも、彼との突然の別れは筆舌に尽くしがたい辛さだったはずだ。だが哀しみも癒えきらぬ訃報の発表当日に、ギター・今井寿は自身のSNSでバンドの活動継続を表明。その言葉どおり同年末、遺された4人の演奏と生前の櫻井の映像や歌唱音源を組み合わせる形で、バンドは武道館ライブを行っている。 バンドが活動を続けられた理由には、絶対的フロントマン・櫻井敦司のみならず、ブレイン・今井寿の存在があったのも大きい。またBUCK-TICKは元々櫻井のみならず、今井とギター・星野英彦が作曲や歌唱を担当する曲も多い。複数のメンバーが楽曲の主軸を担う“バンド自体の強度”が、櫻井亡き後のBUCK-TICKを支えていると言える。 今年1年で改めて今後の活動地盤を築き、バンドは4人体制初のシングル『雷神 風神 - レゾナンス』を11月20日にリリース。12月4日にはアルバム『スブロサ SUBROSA』を発売、そしてファンクラブ限定ライブ『FISH TANKer's ONLY 2024』も開催される。未だ喪失の痛みを携えながらも櫻井の面影を抱き、バンドはすでに新たなフェーズを迎え始めている。 ■The Birthday 一方で、櫻井と近時期に亡くなったチバユウスケ擁するThe Birthdayのように、ライブ活動のみを継続するバンドもある。食道がんの療養発表からわずか約7カ月、55歳の若さでこの世を去ったチバユウスケ。訃報時はリスナーのみならず、大勢の同業者からも追悼の声が上がっていたのも印象的だった。 偉大なロックスターの逝去は、日本の音楽界にとってあまりに大きな喪失だった。しかし彼の遺志を継ぎ、バンドは今年3月にチバの療養直前まで制作していた曲をEP『April』にてリリース。その後も各地の音楽フェスで生前の彼を慕う多くのミュージシャンの力を借りつつ、楽器隊3人はThe Birthdayとして舞台に立ち続けている。その活動はThe Birthdayが、そしてチバユウスケがミュージシャンズ・ミュージシャンとして、長年大勢の同胞から集めた絶大なリスペクトと愛情の賜物でもあるだろう。 ステージ中央は空席のまま、それでも来年バンドは結成20周年を迎える。今後も何らかの形でThe Birthdayの活動が続くことを、そしてチバの音楽が歌い継がれることを、きっと多くの人々が願っているに違いない。