【オーストラリア】原発建設、国民支持上昇も野党案は課題残る
オーストラリアの調査会社フレッシュウオーター・ストラテジーと経済紙オーストラリアン・ファイナンシャル・レビューの世論調査によると、原子力発電への有権者の支持率が36%と2月の調査から3ポイント上昇している。近くエネルギー政策を発表する最大野党の保守連合(自由党・国民党)は、10年以内に原発の稼働は可能としているものの、専門家らの間ではこれに否定的な見方が多い。 調査は3月8~10日に実施され、1,051人から回答を得た。 電源の多様化についての質問に対し、「原発には反対する」との回答は約3分の1で、19%は「中立」とした。最も支持率が高かったのは太陽光で83%。このほか、◇天然ガス:56%◇陸上・洋上風力:56%◇水素:46%◇石炭:33%――だった。 ■10年内の原発導入は無理か 保守連合のオブライエン影のエネルギー相は先に、海外の専門家との協議の上、10年以内に原発稼働は可能で、ニューサウスウェールズ州ハンター地域やビクトリア州ギプスランドなどが候補地と成り得るとの見解を示した。 ただ、フィンケル前主席科学官は、温室効果ガスの排出量を実質ゼロとする「ネットゼロ」目標に向け原発は良策だが、10年以内の稼働はほぼ無理だと指摘。独立シンクタンクのグラッタン・インスティテュートのエネルギープログラム・ディレクターのウッド氏も、国内には原発関連の施設も技能も不在で、建設コストも高いとし、稼働まで約20年必要だとの見方を示している。 ボーエン気候変動・エネルギー相は、「原発産業がある米国でも建設には平均19年かかる」とし、さらに保守連合のコスト見積もりは甘いと述べた。 一方、以前は多額の石炭投資を行っていたエネルギー会社サンセット・パワー・インターナショナルのセントベーカー会長は、ネットゼロ目標に向け原発は外せない選択肢だとし、原発禁止法の撤廃から動き出すべきだとしている。