おぎぬまXのキン肉マンレビュー【コミックス第31巻編】~魔方陣デスマッチよ、願わくばもう一度!?~
同時に強く感じたのは、大事な必殺技を完成に導くには、ここまで丁寧な作り方をしていくんだという点。これもまた『キン肉マン』という作品の重要な特徴のひとつだと僕は思うのです。 例えば他のバトル作品だと、主人公が追い詰められて切羽詰まった瞬間に覚醒して完成形が爆誕する、みたいなパターンがかなり多い。でも『キン肉マン』ではなるべくそうはせず、それが完成に至るまでの過程や理屈を見せることに入念にこだわり描写を費やしていくんです。 これは裏返せば、ゆでたまご先生がこの作品において技という要素をいかに大切に考えていらっしゃるかということの証でもあると思うんです。端折(はしょ)るところは驚くほど端折るけど、譲れないところはしっかりと描く。まさにここは、そんなゆでたまご先生の信念さえも感じられる一幕です。 そしてもうひとつ、忘れがたいのがウォーズマンの竹藪特訓風景。四方八方から無数に飛んでくる竹の矢をマンモスマンのノーズ・フェンシングに見立てて全回避を目指す。しかしなかなか課題をクリアできず苦しむ彼に、最後はまさかのネプチューンマンまで駆けつけ、陰からのその助け舟でウォーズマンも仮想マンモスマンを完全攻略!「ここまで対策万全ならもう勝てるじゃないか」「なんならネプチューンマンまで控えてそうだし!」と読者の期待を最大値まで上げたところで、しかしゆでたまご先生はやってくれます。マンモスマンによるウォーズマンの闇討ちです。 最初に読んだ当時、ウォーズマンの活躍を期待していた僕もさすがにこれはないぞと。「せめて試合で散ってくれ!」と涙したものですが、のちのインタビューなどでゆでたまご先生は「これは盤石になりすぎたキン肉マン・チームに危機感をまとわせるための措置だった」と種明かしをされていまして、それを思うとそこで退場したウォーズマンの代わりが、誰もが来ると確信してた超強いネプチューンマンではなく、勝てるか微妙なジェロニモだったというのもまた絶妙なチョイスでした。 ジェロニモには申し訳ないですけど、これはある意味、逆サプライズですよ。いつかはネプチューンマンが来てくれることは、この時点でも読者はまだ信じて待ってるはずなんです。でもその期待を残したままで、あえてジェロニモを持ってくる。どうなるんだ?......と思わずには居られない。その状態でいよいよフェニックス・チームとの最後の決戦になだれ込んでいくわけです。
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