iDeCoは年金受取にすると税金が多くかかる?iDeCoの受取方法で知っておくべきこと
年金受取にした場合の問題点
iDeCoを年金受取にしたAさんを例にして、どのような問題があるのかシミュレーションしてみましょう。 ●税金と社会保険料を試算 Aさん(70歳・八王子市在住・1人暮らし)は厚生年金を250万円受給しています。 iDeCoの老齢給付は1200万円となり、10年の有期年金として120万円ずつ受け取ることにしました。 年金収入が厚生年金のみの場合とiDeCoの年金(120万円)を加算した場合の税金と社会保険料を試算してみます。 厚生年金のみの場合は、国民健康保険料が約15万円、介護保険料が約9万円、所得税が約3万4000円、住民税が約7万5000円となり、税金と社会保険料の合計は約34万9000円となりました。 iDeCoを年金受取にして年金収入が370万円になると、国民健康保険料は約25万7000円、介護保険料は約10万円、所得税は約8万3000円、住民税は約17万4000円となり、税金と社会保険料の合計は約61万4000円と大きく増えました。 その差は約26万4000円です。 このように、iDeCoを年金受取にして、年金収入が増えてしまうと、税金や社会保険料の負担が増える可能性があります。 ●医療費の自己負担割合が上がる さらに、注意したいのが医療費の自己負担割合です。 Aさんは厚生年金を250万円受給しているため、一定以上の所得があると見なされ、医療費の自己負担割合は2割となります。 しかしiDeCoを年金受取にして年金収入が370万円になると、現役並み所得者とされ、自己負担割合は3割になってしまいます。 介護保険サービスを受けたときの自己負担割合も同じように2割から3割に上がってしまいます。 高齢になると医療や介護のお世話になる機会が増えてくるので、自己負担割合が増えるのは税金が増える以上に家計にダメージを与える可能性があります。
一時金受取の注意点
先ほどのAさんの例では、公的年金等控除額の段階を超えないように年金額を調整するか、一時金受け取りにして退職所得控除を利用することで、負担増を回避できるかもしれません。 そこで、ここからは一時金受け取りをする場合の注意点をお伝えします。 一時金受け取りの場合は、勤続期間に応じた退職所得控除が受けられます。 iDeCoの場合は加入期間を勤続期間とみなして計算します。 たとえば、iDeCoに25年加入した場合は、下記のように計算し、1150万円まで非課税となります。 800万円+70万円×(25年-20年)=1150万円 しかし、iDeCoの他に会社からもらう退職金がある場合は注意が必要です。 両方を同時期に受け取ってしまうと、それぞれの金額を合算して退職所得控除額が計算されます。 (勤続期間(加入期間)は長い方を採用)。 両方を合計しても非課税枠に収まれば問題ありませんが、iDeCoの一時金や退職金が多い場合は、非課税枠をオーバーして税金を多く払うことになります。 iDeCoの一時金と退職金を受け取る時期をずらせば解決するかといえば、そう簡単ではありません。 たとえば、先に退職金を受け取って、あとからiDeCoを一時金で受け取る場合、iDeCoの受け取りの「前年以前19年間に一時金で受け取った退職金」は合算の対象となります。 つまり、20年以上は間をあけないと退職所得控除を再度使えないというわけです。 ただし、iDeCoの一時金を先に受け取る場合は、別のルールになります。 この場合は、「前年以前4年間に一時金で受け取った退職金」が合算の対象となります。 つまりiDeCoを一時金で受け取り、そこから5年以上経過したあとに退職金を受け取れば、合算はされず、それぞれ退職所得控除が適用できるというわけです。 5年以上ずらすことが可能であれば、先にiDeCoの一時金を受け取って、あとから退職金を受け取ると節税になります。