アギーレジャパンの「選考」は言い訳?
だが、そこに落とし穴があった。 ただでさえ砂まじりで「ゴルフのバンカーのような」(森重)ピッチである。パスやトラップがズレる可能性は高い。ブラジルは中盤での圧力を高め、日本のミスを明らかに狙っていた。柴崎がボールを奪われ、反撃ムードを削がれる2失点目を喫するのは、後半開始早々の49分のことだった。 その後、ブラジルは重心をやや低くして、1点を返そうとする日本に対してスピーディなカウンターを見舞うだけでよかった。相手にとって最も嫌なことをする――。それこそ、新体制となった日本代表が最も身に付けたいものだ。だからこそ、ベストに近いメンバーでこの一戦に臨みたかった。 ブラジル代表とはこの2年間で3度目の対戦となる。ポーランドで戦った12年10月の対戦では真っ向勝負を挑んだ。前半は本田圭佑と中村憲剛を、後半は本田と香川真司を前線に並べ、徹底的にショートパスを繋いでいく。結果としてミドルシュートやカウンターからゴールを許し、0-4で大敗したが、厳しいプレスをかわしてペナルティエリアまで何度も攻め込んだため、チームはポジティブな雰囲気に包まれていた。本田が「サッカーやっていて久しぶりにこんなに楽しい気持ちになれた」と振り返った。 ワールドカップ予選を突破して臨んだ13年6月のコンフェデ杯では、開始3分にネイマールにゴールを決められ、日本の良さをまるで出させてもらえないまま、0-3で敗れた。 そうして迎えた今回の対戦。攻撃的なスタイルにこだわったザックジャパンとは異なり、アギーレジャパンは相手の長所をしっかりと消し、スタイルより勝利にこだわるチーム作りを進めている。そんなチームがブラジル相手に、どのようなゲームプラン、戦い方で臨むのか。この2年におけるストーリーがあるからこそ、ベストに近いメンバーでブラジルと戦う姿が見たかった。 ブラジル戦の2日前、霜田正浩日本サッカー協会技術委員長も、こんなことを言っていた。 「(アギーレ監督は)いろんな国といろんな対戦経験がある監督なので、ウルグアイはウルグアイ、ブラジルはブラジルだと意識している。そのブラジルにどうやって勝つか。そこだけです、考えているのは。もちろん、スタイルの追求もそうですが、相手は必ず変わるもの。目の前の相手をどう倒すかを一番追求しないといけないと監督も言っていますし、実際にそういう流れで進んでいる。どの相手でも同じようにやらないといけない部分と、その相手にどうやって勝つかという両方を求めていきたい」