城郭調査、30年の成果 日本考古学協会員・保角さん、著書としてまとめる
日本考古学協会員で、中世城郭研究会の会誌「中世城郭研究」同人の保角(ほずみ)里志さん(73)=東根市本丸北1丁目=が、城郭調査の成果を著書「山形の城と戦国世界」としてまとめた。遺構から曲輪(くるわ)や防御施設の配置を読み取り、城の構造を分かりやすく示した自作の「縄張(なわばり)図」を数多く交えるなどし、戦国時代に本県で多くの城が造られた背景などを考察している。 保角さんは山形大人文学部で考古学を学び、県職員となってからは文化財担当や県立博物館勤務などを経験した。県職員時代から休日を利用して県内各地の城を巡り、定年退職後に調査・研究を本格化させた。 著書では、保角さんが初めて城の悉皆(しっかい)調査に取り組んだ尾花沢市・大石田町をはじめ、最上義光が整備した山形城、最上町の小国城、鶴岡市の大浦城など、県内各地の150ほどの城について調査した約30年間の成果をまとめている。何度も現地に通って歩き、実測し、地形図に落とし込んで製作した縄張図が数多く掲載され、往時の城の姿を想像させる。
保角さんによると、本県には1500程度の城が存在したと考えられ、多くが戦国時代に造られたものと考えられる。山城、丘(おか)城の濃密な分布が見られる尾花沢市・大石田町や最上地方は「日本を代表する城の宝庫」で、豊かな食料事情を背景に、戦争への備えが進められたのではないかと推察されるという。 「ここにも城があったと知ってもらい、その役割を含めて地域の歴史を学ぶことに役立ててほしい」と話す保角さん。遺構を歩ける遊歩道の整備や案内板の設置など、各地で保全の動きが広がることにも期待を込める。著書は定価2200円で、こまつ書店など県内外の書店で販売している。