第154回 芥川賞受賞者・本谷有希子氏の記者会見(全文)
作家にとって賞とは「もっと書きなさい」という餌のようなもの
司会:はい、続いてご質問の方いらっしゃいますでしょうか。じゃあ真ん中の奥の男性。 北國新聞:石川県の北國新聞のミヤモトと言います。この度はおめでとうございました。地元でも、歓喜と言いますか、喜びの声が広がっているんですけれども。本谷さん自身、地元に対してメッセージがあれば、教えてください。 本谷:地元の方、本当によくしてくださってて、本当に私、長い間やっぱり、これ4回目で、何回も言いますけど、4回目で取ったので、そのたびに昔からずっと応援してくださってたので、今回取れて。だし、その石川県の人たちだけじゃなくて、今回取れて思ったのが、なんか自分がうれしいかどうかっていうのは、もう頭が真っ白でよく分かんなくて、でも、あ、これでなんか回りのみんなが喜んでくれると思って、それですごくうれしいなと思ったので、石川県の人たちも喜んでもらえてたらうれしいです。 司会:よろしいでしょうか。続いてご質問の方いらっしゃいますでしょうか。じゃあこちらの女性の方。 NHK:NHKのフジタニです。おめでとうございます。本谷さんは高校時代に演劇部に所属されて、当時から脚本を書いていらっしゃったということなんですが。今回の作品に生きたこと、というのはありますでしょうか。 本谷:劇作が、ですよね。劇作、うーん。特に意識はしてなかったんですけど、昔よりはやっぱり小説は小説でしかできないことを書こうっていう意識が強くなってたので。うーん。ないと、あ、でも人を面白く、人を魅力的に書こうっていうことに関してはとても、全体の構成とか小説としての何かっていうよりは、とにかく好きな、私が面白い魅力的だと思う人をすごく愛して書こうっていう気持ちがあるのは、やっぱり演劇で生身の人間とやってたから、人間というものにすごく興味があるんじゃないかなと思います。 NHK:ありがとうございました。 司会:よろしいいでしょうか。あ、あじゃあこの、こちらの女性で。 日本テレビ:日本テレビ『ZIP!』の尾崎と申します。受賞おめでとうございます。 本谷:ありがとうございます。 日本テレビ:先ほど話しの中で「取ると思わなかった」という言葉がありましたが、受賞するとはまったく思ってなかったんでしょうか。 本谷:うん、思って(笑)。思ってもいいよな、とは思ってたんですけど。なんかね、今回なんか滝口さん取るんじゃないかなって思ってたんですよ。それで、なんかそういう予感があったので、実際、受賞の電話を受けたとき、あ、言えません。ちょっとごめんなさい(笑)。言えないような、変なことをしてて、それでもらったのでちょっと本当に、うん、頭が真っ白になるんじゃないかなと思ってたんですけど、そこからさらにもう1段階越して、本当に自分のことじゃないみたいに冷静に聞いてました。うん。 日本テレビ:ありがとうございます。 司会:そろそろ最後の質問に。じゃあ、あちらの真ん中の方。 日経エンタテインメント!:日経エンタテインメント!タカミヤと申します。おめでとうございます。 本谷:よろしくお願いいたします。 日経エンタテインメント!:4回目の候補というところを強調されてた部分があるかと思うんですけど。最初に候補になってから足かけ10年で、4回目にしてというところで、すでに多くの演劇部門でも文学でも賞は取られてますけど、芥川賞というところで何か思いであったりとか、これまで取れなかったことを振り返っていただいて、思ったところをちょっと伝えていただければと思うんですけども。 本谷:いつもやっぱり賞って何なんだろうって。賞って作家にとって何なんだろうってことはよく、候補になるたびに考えていて、で、今ももうよく分かっていないままなんですけど。うーん、芥川賞。餌のように感じるときもありますね。私たちにとって、やっぱり作家にとって餌をまいて、もっと書きなさい、もっと書きなさいって言ってくれてるような感じがあって。 で、そのどっちかって言うと取ってどうこうというよりは、その餌がなかったときにもちゃんと書けるのかなっていうほうに、興味というか考えがいきますね。今回も取らないような気がしてたので。それでも私はちゃんと、この先書き続けるのかなあっていう。そのどっちかって言うと賞をもらったうんぬんより、書き続けるっていうことのほうが作家にとって、すごく大事な資質だと思うので。それが自分にあるかどうか試させられるんだな、と思います、この賞っていうものは。 日経エンタテインメント!:ありがとうございます。 司会:じゃあ最後の質問ということで。真ん中の男性の方。 北國新聞:すいません。石川県の北國新聞のシミズと申します。このたびはおめでとうございます。 本谷:ありがとうございます。 北國新聞:石川県、長い歴史の中で、芥川賞、石川県の出身者では今回初めての受賞になったんですけれども、そのことについてのご感想と、高校まで石川のほうで生活されたと思うんですけど。その石川の生活が今の執筆活動になんか与えてる影響があれば、この2点、ちょっとお伺いしたいんですけれども。 本谷:(笑)。石川の生活が与えている影響。うーん。これだっていうこともできるんですけど、なんか全部ウソっぽくなりそうで、やっぱり今、自分がなんの影響を受けてこういうものになってるかっていうのはすごく混沌としてて。うん。これだ、これだって言っていけない部分がある。ただ、やっぱり自分がどういう人たちに囲まれてたかっていうこと、石川県でどういう人たちに囲まれてたかってこととかは、ものの考え方とかにすごく影響してるだろうなと、うん、思っています。 北國新聞:石川県出身で初めてというところは。 本谷:初めての受賞に対してですか。初めての受賞に対して。うん。初めての受賞に対してはね、まだよく分かんないな、はい。でも、うん、これで石川県の人たちが喜んでくれるのかも、ちょっとおこがましいんですけど、うん、そういうふうに思ってもらえたら、うれしいです。 司会:よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。本谷さんのほうから何か一言おっしゃりたいことはございますか。何か一言、最後におっしゃりたいことはありますか。 本谷:ううん。大丈夫です。はい。 司会:大丈夫ですか。はい。じゃあありがとうございました。これにて本谷さんの会見を終わります。 (完)