「1人での食事が常態化し、気づけば孤独になっている若者は多い」見落とされている「現役世代の孤食」という問題
10年来放送が続く深夜ドラマ『孤独のグルメ』(テレビ東京系)は、1人飯の喜びを描いて人気を博した。人付き合いで疲れたドラマの主人公、井之頭五郎の「個食」は、確かに人にとやかく言われる筋合いではない。しかし、もし1人飯が不本意だったら? 「孤食」なら、それは放置できない問題ではないだろうかーー。 【写真】東京・世田谷で開かれているコミュニティーディナーにはさまざまな人が訪れる 「われわれが孤独を問題視するのは、人と話す機会が減ってしまうと、精神的にいいコンディションになりにくい傾向を感じているからです。悩みが肥大化し、解決も遅くなる」と話すのは、コーチングを手がけるはぐくむの小寺毅社長だ。
■1人で食べるのが常態化している若者 大学講師や企業研修の仕事も行うため、幅広い人たちに接する小寺社長が20~30代の若い世代に「ご飯はどうしているの?」と尋ねると、職場で仕事しながら食事したり、コンビニで買ってサッと済ませるという人が多いという。「タイパ飯」という言葉が流行する時代だ。日々、栄養補給だけの食事を続けるのは、どのように問題なのだろうか? 「『今日は1人だけどまあいいか』から始まって、だんだんとその生活が固定化する。ご飯を1人で食べれば楽だし、誘って断られるのもイヤ。気が付けば孤独になっている、という人は若い世代でも多い」と小寺社長は話す。
子どもの孤食は、1982年にNHK特集『こどもたちの食卓――なぜひとりで食べるの』の放送以来、社会問題として認識されてきた。高齢者については2000年代初頭、地域の交流を目的とした「コミュニティー・レストラン(コミレス)」が各地に誕生したほか、宅配弁当の見守りサービスなど、食を通した取り組みはある。 しかし、現役世代は見落とされてきた。現役世代は仕事や学業でつながりがある、と見過ごされがちかもしれない。小寺社長は、そうした層に目を向けている。
「今は人とのつながりが、どんどん薄くなっている気がします」と小寺社長。はぐくむでは、他者、自分、そして自然との3つのつながりが人生を豊かにする、とコーチングを実践してきた。 ■初対面の人たちと食事を共にする もう少し気軽に参加できる方法も探る中で、「人とのつながりを得つつ自分の思いも分かち合える食事の場を通じて、楽しさ、豊かさを感じられるのではないか、とコミュニティーディナーを始めました」(小寺社長)。