宮崎哲弥「日本語の裾野を広げるためにもルビを復活させるべき」
黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「黒木瞳のあさナビ」(12月8日放送)に評論家の宮崎哲弥が出演。『教養としての上級語彙』について語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「黒木瞳のあさナビ」。12月4日(月)~12月8日(金)のゲストは評論家の宮崎哲弥。5日目は、ルビの必要性について― 黒木)これからもルビの必要性を働きかけていきますか? 宮崎)ルビの必要性の1つは、外国人や子どもたちが国語学習をする際、日本語の裾野を広げるために役立つということです。終戦直後の1946年から、ルビ廃止と漢字制限という戦後の国語改革が始まりました。ルビをふるような言葉は使わせない。「優しい漢字だけ使え」ということです。私は優しさの強制だと思います。 黒木)そういうことがあったのですね。 宮崎)それが80年近く続いているわけです。 黒木)それでは国語力が落ちて当たり前ですね。 宮崎)いまになって、その効果が現れてきていると感じます。日本人全体の問題なのです。ここを何とかしなくてはいけない。1つの有力な手段はルビを復活させることですが、同時に「大人の語彙を再建していこう」というのが私のいまの考えです。
黒木)私も語彙が多い方ではないですが、ある日、仕事について夫と話していたとき、夫が「やはり虚心坦懐で仕事ができる人が一流だよね」と言ったのですよ。私が「どんな意味?」と聞くと、「知らないなら自分で調べなさい」と言われました。調べた結果、「何でもありのままを受け入れて、穏やかに仕事ができるのが一流なんだな。なるほど」と思いながら覚えていくのですよ。それこそ「門前の小僧習わぬ経を読む」ではないけれど、少しずつ、いろいろな人たちの支えがあって語彙を増やしてはいるのですが。 宮崎)本来ならば、『教養としての上級語彙 知的人生のための500語』のような本は必要ないのです。ところが、黒木さんの周りの方々はそんなことはないと思いますが、全体が落ちてきているので、このような本が必要になってくるのです。 黒木)言葉を覚えるたびに知らなかった一面が明けてきて、平坦ではない世界が見えてくるという。 宮崎)そういうことが大切だと思います。いまは言説や言葉遣いが単純化してしまっている。それによって、複雑な思考や微妙な感じ方が伝わらなくなっているような気がしてなりません。 黒木)そうですね。 宮崎)もっと複雑な感じ方があるのに、しっかり伝えられない。それはずっと平易な言葉、単純な言葉ばかりを使い続けたために陥った罠のような気がします。