<甲子園交流試合・2020センバツ32校>明石商3-2桐生第一 明石商、攻守見せ場
◇第5日(16日・阪神甲子園球場) 明石商が接戦を制した。先発・中森は最速150キロの直球や変化球で的を絞らせず、5安打2失点で完投。打線は六回2死二、三塁から井上の左前2点適時打で先制し、八回は代打・山口の右前適時打で加点した。宮下、蓼原(たではら)の継投策を取った桐生第一は、七回は星野、九回は川端の適時打で1点差に迫ったが及ばなかった。 【真夏の熱闘】交流試合の写真特集はこちら <明石商3-2桐生第一> ◇筋力アップの証し打 井上隼斗遊撃手(明石商・3年) 打球を目で追いながら、明石商の5番・井上は祈っていた。「越えてくれ」。ジャンプした遊撃手のグラブの上をライナー性の打球がかすめ、左中間の芝生に転がった。互いに無得点の六回2死二、三塁、均衡を破る2点適時打。3年間の成長を示した一打だった。 わずか2球で追い込まれたが、バットを指2本短く持ち、桐生第一の左腕・宮下が決め球にする外角球に狙いを定めた。外に逃げるスライダーに右足を踏み込み、「球の内側をたたく意識」でコンパクトに捉えた。 入学時は体重60キロ程度で「打球が外野まで飛ばない」のが悩みだった。堅守を買われて1年秋からベンチ入りしたが、4強入りした昨夏の甲子園は1打席に立っただけ。昨秋、定位置確保に向けて一念発起し、多い日には1日1升の白米を食べ、筋力トレーニングにも精力的に励んだ。パワーを備え、169センチ、72キロの屈強な肉体を手に入れ、打球も飛ぶようになった。 得意の守りでは一回1死一、二塁で三遊間の深いゴロを好捕し、攻守で見せた。それでも、「取れる打球が抜ける場面があった。50点」と満足することはない。甲子園で得た自信を胸に、さらに大きな舞台を目指している。【石川裕士】 ◇桐生第一、継投で対抗 新チーム結成時から切磋琢磨(せっさたくま)してきた桐生第一の3年生2投手の継投で、屈指の好投手を擁する明石商を相手に接戦を演じた。 桐生第一の先発はエース左腕の宮下。直球は常時120キロ台ながら、同じ腕の振りから投じるチェンジアップやスライダーを交え、明石商打線から凡打の山を築いた。走者を許しても、緩いけん制も入れてたっぷりと間をとり、自分のペースに引き込んでいく。「自分は力で抑えられる投手ではない」と、昨秋から工夫を重ねてきた投球術を披露した。 成果が出たのは、六回1死一、三塁で4番・福本を迎えた場面だ。1、2球目とスクイズの構えで揺さぶられたが動揺することなく、4球目の投前へのスクイズを落ち着いて捕手・星野へグラブトスし、三塁走者を挟殺した。続く井上に先制適時打を許して「要所で(制球が)甘くなった」と悔やんだが、納得の投球だった。 七回からは、140キロ超の速球が持ち味の右腕・蓼原が継投。直球主体に押して2回を1安打に抑えたが、その1本が相手の追加点につながり、「浮足立って球が浮いてしまった。宮下に申し訳ない」と、切磋琢磨してきたライバルに頭を下げた。 宮下は群馬独自大会では不調からエース背番号「1」を蓼原に奪われ、「悔しい気持ちがあった」という。それだけに、大舞台では2人で持ち味を発揮し「良いチームで恵まれていた。やり切れた」と宮下。敗れこそしたが、表情は晴れやかだった。【伝田賢史】 ……………………………………………………………………………………………………… △午前10時3分開始 桐生第一(群馬) 000000101=2 00000201×=3 明石商(兵庫)