「映画よ、もっと気候変動を語れ」ディカプリオ主演作や『マッドマックス』の功績とは?
明るい兆しも見え始めた
気候現実テストに合格した映画はわずかにとどまったが、明るい兆しもある。 かつて何千作ものテレビドラマと映画を調べた際には、気候変動を取り上げた映画は3%に満たなかった。それに、今回の調査対象期間のうち、後半の5年間の「合格作」の数は、前半の5年間の2倍に達している。 ジョイナーによれば、興行収入面でも注目すべき点がある。気候現実テストの少なくとも一部の基準を満たす作品は、そうではない作品と比べて興行収入が10%高いという。 気候変動を織り込めばヒット確実だと主張しているわけではない。それでも、「気候変動もの」は観客に敬遠されると懸念する必要はないと、ジョイナーは話す。 環境という題材は、19世紀末の映画黎明期にさかのぼる長い歴史を持ち、ジョイナーのような活動家はその伝統を受け継いでいる。 そう指摘するのは、米イースタンイリノイ大学のジョゼフ・ヒューマン名誉教授(コミュニケーション学)とロビン・マリー名誉教授(英語学)だ。 映画における環境問題の描き方について複数の共著がある2人は、最も初期の例として、「映画の父」と称されるフランスのリュミエール兄弟の短編作品を挙げる。 1897年に現在のアゼルバイジャンの首都バクーで撮影されたもので、極めて初期の大規模油田の光景を捉えた映像だ。 「現代なら環境災害と呼ばれるはずの出来事が、当時は石油生産という偉業と見なされていた」と、ヒューマンは本誌に語る。 映像では、巨大油井が煙と炎を噴き上げ、その手前を1人の人物が歩いている。「有害で恐ろしい環境だと分かるが、この人物は気にしていないようだ」 ホラー映画やアクション、西部劇、コメディー作品を対象に長年研究を行ってきたヒューマンとマリーによれば、映画での環境問題の扱われ方は、このテーマをめぐる世間の認識とともに変わる傾向がある。 石油危機が起き、アースデイが創設された70年代には、環境問題を扱う作品も増えた。「環境的変化に対する新たな見方に呼応する映画が作られた」と、マリーは指摘する。 いい例が、73年のSF映画『ソイレント・グリーン』だ。温室効果を初めて取り上げた大手スタジオ作品の1つである本作では、人口過多と食料不足に悩む世界で、チャールトン・ヘストン扮する主人公が暑さに苦しみ続ける。 現代の多くのハリウッド大作には気候という視点が欠けているが、低予算映画や独立系作品、ドキュメンタリー分野では環境問題がブームになっていると、マリーは言う。「気候変動への意識の高まりを反映した動きとみている」 問題は観客に行動を促すことができるかどうかだと、ヒューマンは話す。「知識を提供することは可能だ。だが今のところ、それは必ずしも行動につながっていない」