生ごみを投げつける参加型ランウェイも ミラノの気鋭ブランドが仕掛ける大胆な演出
生ごみが飛び交うアヴァヴァヴのランウェイ
「アヴァヴァヴ」は、リンダ・フリベリ(Linda Friberg )とアダム・フリベリ(Adam Friberg)によって2017年に設立された。2020年からクリエイティブディレクターを務めるベアテ・カールソン(Beate Karlsson)は、セントラル・セント・マーティン(Central Saint Martins)でファッションを学んだ後、「コーチ(COACH)」でアクセサリーデザイナーを務めた経験を持つ。アヴァヴァヴのショーもまた、前代未聞な試みが毎シーズン話題をさらっている。2024年春夏シーズンは「No Time to Design, No Time to Explain(デザインする時間も説明する時間もない)」と題したショーで、ファッション業界や現代社会の目まぐるしいスピード感やストレスを表現。ポストイットやガムテープで作られた服や、涙でマスカラが流れたようなメイクがSNS上で大きく注目された。 今シーズンは、インターネット上の誹謗中傷に対する風刺をランウェイで表現。会場のデジタルサイネージには、ブランドへのヘイトコメントが映し出され、モデルたちにはバナナの皮や缶ジュースといった生ごみが観客席から次々と投げつけられる(ゲストにはゴム手袋が配布され、ごみ投げに参加するよう推奨されていた)。中世の魔女狩りへの言及として、ルックには中世風の十字架のようなネクタイやテーラードスーツがスタイリングされ、ゴシック要素を感じさせる。ドレスはごみによって汚されていくが、“自己尊重の象徴”を演じるモデルたちは一切ひるまず、表情を変えない。 フィナーレに登場したデザイナーの顔面にはなんとケーキが投げつけられ、本人はダブルピースをして去っていった。その大胆かつシニカルな演出には、ブランドの信念と社会へのアンチテーゼがにじんでいる。 いずれもハイブランドの客層とは異なり、若いクリエイターたちが個性あふれる装いで参加し、独自のコミュニティを形成しているのも印象的。彼らのカルチャーや時代を反映したコンセプチュアルなショーは、ライブ感と活気にあふれている。ブランドと観客たちの距離感をぐっと縮める“参加型イベントとしてのファッションショー”は、これからも大いに支持を集めそうだ。