FIFA医療トップ「9月まで試合を開催すべきではない」と注目見解…再開白紙のJリーグにどんな影響を及ぼすのか
競技的な視点ではなく、医学的な見地に立った提言だった。それでもサッカー界の総本山、国際サッカー連盟(FIFA)の要職を務める人物が世界へ向けて発した警鐘は重みを伴っている。 新型コロナウイルスが地球規模で猛威を振るってきたなかで、ごく一部の国を除いて世界中でサッカーの公式戦が中断されている。こうした現状に対して、FIFA医事委員会のトップを務めるベルギー人の医師、ミシェル・ドーゲ氏が少なくとも9月までは試合を行うべきではないとする見解を示した。 スカイスポーツや公共放送のBBCなど、現地時間28日に行われたイギリスメディアのインタビューに応じたドーゲ氏は、医師の立場から「優先されるのはお金の問題ではなく、人間が生きるか死ぬかの問題」と指摘。 サッカーで不可避となる場面をあげながら、早期再開に異を唱える理由を説明した。 「サッカーはコンタクトプレーが避けられないスポーツであり、ソーシャルディスタンスの規制が講じられている現状では、公式戦の再開をさらに我慢していく必要がある。人と人との接触が可能になった段階で、初めて再開することが可能になると考えている」 新型コロナウイルス感染への予防策として世界的に広まっているソーシャルディスタンスは、他人との距離を意図的に1.8メートル以上保ち、濃厚接触を避ける状況が推奨されている。サッカーが例外になるはずもなく、だからと言ってピッチ上でソーシャルディスタンスを順守すれば試合にならない。 ゆえに早期再開は選手たちの命に関わるとドーゲ氏は警鐘を鳴らした。強制力は伴わないものの、2019-20シーズンを断念して新シーズンに備えるべきだ、とする指摘は説得力を帯びている。
3月中旬から中断を強いられているヨーロッパ各国では、オランダリーグが先陣を切る形で現地時間24日に2019-20シーズンの打ち切りを決定。フランスリーグも近く追随すると見られ、ベルギーリーグでは同5月4日に打ち切りか否かを決める投票が行われる。シーズンが終盤に差しかかっていたなかで、ドイツやイングランドなどを除いてはドーゲ氏が提唱する方向へと向かいつつある。 ならば、今シーズンの開幕節を終えた直後から中断を余儀なくされている日本はどうなのか。Jリーグの村井満チェアマンは、最も早く再開できる時期として6月13日をあげている。これは全国で発令されている緊急事態宣言が予定通りに5月6日に解除される状況が前提となっているが、47都道府県における一律の延長は避けられそうにないのが現状だ。1か月程度の延長で調整に入ったとの報道もある。 自宅待機中でゼロベースに近い状態になった選手たちのコンディションを考慮して、村井チェアマンは1カ月単位で再開時期を検討する方針を決めている。6月13日が流れれば「次は7月になるのか、8月になるのか、あるいはもっと深いところになるのかは現段階で申し上げられない」としている。 実際にドーゲ氏が言及し、村井チェアマンも「もっと深いところ」と言及した9月の再開となればどのような状況が生まれるのか。 Jリーグが主催する公式戦のYBCルヴァンカップに関して、同チェアマンは「8月の再開になれば、大会方式が大幅に変わる可能性がある」と明言している。 現状のグループリーグからプレーオフ、そして決勝トーナメントへと進む大会スケジュールを、東日本大震災が発生した2011ー12シーズンのように、トーナメント形式のみとすることを候補に置きながら変更。同時に10月24日に予定されている決勝も、大きく後ろ倒しされることになる。