返済中の住宅ローン・変動金利の引き上げに向けて銀行が水面下で打つ布石とは? 現役銀行員が銀行のリアルを報告!
銀行が打つ「布石」
最近、私が勤務する銀行内部で、変動金利の事業資金融資(*)に関して、次のような指示が発せられました。 《銀行からの指示》 「変動金利事業資金融資は、今後金利上昇局面を迎えた場合に、取引先ごとにリスクや取引内容などから個別に採算性を計算し、必要に応じて金利引き上げを交渉する必要がある。そのときに備えて、金利引き上げ交渉の経験がない若手に対し、支店長や役職者が指導し、金利のある世界に備えておくこと」*事業資金融資 銀行が法人や個人事業主に融資を行う融資。その多くは変動金利になっており、事業資金融資で用いられる基礎的な金利が「プライムレート」である。住宅ローンの変動金利もこのプライムレートを基準にして、プライムレートの上下動に連動する「プライムレート連動型変動金利」としている銀行が多数派。いっぽう一部のネット銀行には、プライムレート基準ではない独自の金利体系のところもある。 事業資金融資では、業況からリスク度などを点数化(「自己査定」「信用格付け」などと呼ばれる)して採算性を計算します。その結果、リスクの高い取引先ほど融資が不良債権化する可能性が高いという論法で、点数に応じた融資金利を決めます。その後で、業況悪化などにより金利が採算割れすると銀行が判断した場合には、返済中の融資金利を引き上げることになりますが、これは昔から現在まで行われてきたことです。 しかし、長く低金利が続いたことやコロナ禍などもあり、バブル崩壊から今に至るまで、銀行は大々的に事業資金融資の金利引き上げを行うことを避けてきました。そのため、若手銀行員に未経験者が多い。そうした状況を踏まえて発せられたのが、上記の指示となります。 つまり、銀行が「金利を引き上げる体制づくり」を始めたということ。これは返済中住宅ローンの変動金利の一斉引き上げという事態に備えた「布石」に他ならない、と私は感じています。
まとめ
あくまで推論ではありますが、若手銀行員に金利引き上げの交渉術などを学ばせているのは、金利一斉引き上げという未曽有の大変動に備えているからではないでしょうか。ちなみに、私は事業資金融資で個別に金利引き上げをした経験があるため、支店長や若い管理職からいろいろ聞かれたり、講師役を頼まれる可能性があると言われたりもしています。こうしたことからも、周囲が金利引き上げに向けて突き進んでいると感じます。 とはいえ、バブル崩壊後から現在まで住宅ローン金利の一斉引き上げなどという事態はありませんでしたので、ここから先は私自身も想像すらしてこなかった未知の領域です。そのため、自分自身がその一員として動くことになったらと考えると、「気が重い」というのが正直な気持ちです。 返済中の住宅ローン金利が一斉引き上げになる日はいつなのか。予想はできませんが、「その日」がヒタヒタと近づいていることを一人の銀行員として感じています。 今から情報収集をしてその日に備えるなど、この記事が参考になれば幸いです。 666bd87a905bd4cef2000000
加藤隆二