27歳道産子女子がビーチバレー挑戦 無縁だった日焼け止め手に福岡で奮闘中
バレーボールVリーグ女子の「アルテミス北海道」のアタッカーとして活躍し、昨季2023～24年シーズン限りで退団した真田知紗都（27）が、約1400キロ離れた福岡の地で再出発した。 ■小学校時代は硬式テニス。バレーは中学校から【真田知紗都プロフィール】 将来的なVリーグ参入を目指す女子のクラブチーム「福岡ギラソール」に今夏入団。監督はビーチバレーボール男子日本代表として1996年アトランタ五輪に出場した高尾和行さん（57）で、真田の加入に伴ってビーチバレー部も創設。新たな競技に軸足を置きながら、インドアとの「二刀流」で新たな夢を描く。 福岡市の「シーサイドももち海浜公園」の海岸には常設のビーチバレーコートが3面ある。「土日に学生や大人がふらっとやって来て、当たり前のようにボールを追っているんですよ」。練習は週5日ほど。生まれ育った北海道では無縁で、インドアでは必要なかった日焼け止めを何度も塗っても、大量の汗で流れてしまう。そんな毎日に「ゼロから少しずつでも積み上げているという実感がある」と充実感を覚えている。 春先に軽い気持ちで福岡にやって来て、ビーチバレーを2日間体験した。あいにくの強風にもかかわらず「楽しくて…」とハートをわしづかみされた。きっかけは、男子の国内第一人者で福岡を拠点に活動している高橋巧（32）＝ANAあきんど＝と、その高橋をマンツーマンで指導している高尾さんの存在だった。
この道を選んだ経緯
もともとは他チームでインドアを続けるつもりだった。「北海道で働いていた時の会社の人と、高橋さんが知り合いだったんです。このままVリーグでプレーを続けるのもいいけれど、将来的なことも含めて一度考えてみようかなと」。福岡での初体験から約1週間で決断し、1カ月後には引っ越しに取りかかった。 コート内では6人で役割を分担するインドアに対し、ビーチバレーは2人だけ。誰もが主役を張れる。控え選手も不在。「中学からずっとインドアでやってきたので、ある意味、個人競技みたいなところも新鮮でした。頑張った分だけ自分のモチベーションになるのも魅力でした」。福岡では活動を支援してくれる会社との出合いもあり、新天地での生活にめどが立った。 太陽の下、砂浜でプレーするビーチバレーではさまざまな発見もあった。「ボールの大きさはインドアとほぼ変わりませんが、太陽や風、砂などの条件でパス一つでもかなり神経を使わなければいけません。砂の上でプレーするので、ステップを踏むのも難しいですし、何よりも風を読んでプレーするには、もっと砂の上での経験を積むしかないと感じています」。オリンピアンの高尾さんから基礎的なことを学びながら、ビーチバレーならではの特徴への理解を深めている。 どんなときでも「わくわくする自分でありたい」と願う。「いつも決断するときは『人生一度きりだし…』と言い聞かせています。自分が『楽しいな』とか『面白そうだな』と思った瞬間に動きたい性格なんです」。初めて暮らす場所で、かつてない暑い夏を過ごすうちに、いつの間にか自分が熱くなっていたのだ。 コーチの高尾さんからは「10年頑張って、オリンピックを目指そう」と背中を押された。だからといって最初から高みを見据えるのではなく、地に足を着けて一歩ずつ進んでいく。「今は（ペアを組む）パートナーもいませんし、まずは来年公式戦に出ることが目標です」。アスリートとしての現実的なテーマを明かした後に、くすっと笑った。「博多弁をきちんと聞き取れるようにもなりたいんです。最初、こっちに来たときは『何しよ～と？』の意味がよく分かりませんでしたから」。小麦色の肌、潮風になびくカラーリングした髪には、自然体の笑みがよく似合う。（西口憲一）
西日本新聞社
