米軍司令官が発した衝撃的なワードを緊急検証!! 米軍の台湾防衛の切り札「無人の地獄絵図」とは何を 意味するか?
ウクライナとロシアの戦争では無人機がかつてなく大きな役割を担っているが、もし台湾有事になればその流れはさらに進む。異例の言葉遣いで波紋を呼んだ米インド太平洋軍司令官の発言を基に、いったいどんな戦いが想定されるのか、陸海空のスペシャリストたちが緊急予測。どんな「地獄絵図」が生まれるのか? 【地図】台湾海峡は無人兵器で「地獄絵図」に? * * * ■ヒントになるのは米議会が公開した法案 米軍の6つの地域統合軍のうち東アジアを担当するインド太平洋軍のサミュエル・パパロ司令官が、米ワシントン・ポストのコラムニストによるインタビューで、台湾有事に言及した際に使った〝言葉〟が今、注目されている。 「中国軍の艦船が台湾侵攻のために台湾海峡での航行を始めた直後に、米軍の無人兵器を配備する。多数の機密装備を用いて、台湾海峡を『無人の地獄絵図』にしたい。1ヵ月の間、(中国側を)〝惨めな状況〟にすることで時間を稼ぐ」 地獄絵図? 惨めな状況? 抑制的でスマートな発信を基本とする米海軍大将にしては、異例なほど過激な物言いだ。 国際政治アナリストの菅原出氏はこう言う。 「背景にはフィリピンでの事例があると思われます。フィリピンはアメリカとの防衛協力を強化し、支援を受けて中国に対抗する姿勢を明確にしてきたにもかかわらず、最近では南シナ海における中国船のフィリピン船に対するアグレッシブな行動がエスカレートしている。 つまり、台湾についても関係強化だけでは中国の行動を抑止できないと考え、過激な発言をしているのではないでしょうか」 ただ、もちろん「地獄絵図」という言葉には根拠がある。 5月28日、米連邦下院議会は2025年度(今年10月から1年間)の国防権限法の法案全文を公開した。 そこに含まれる139兆円の予算案の中には、多種多様な無人兵器を多数保有する中国軍の量的優位を潰すために低価格の無人兵器を大量生産する新システム「レプリケーター」(自己複製子)の計画、AI搭載の新たな無人航空機や無人艇の開発、米陸軍へのドローン部隊の創設、そして、海洋を封鎖して中国への原油輸送を阻止する戦略などが盛り込まれている。 元米陸軍情報将校の飯柴智亮氏が解説する。 「中国が台湾に侵攻作戦を行なった場合、アメリカはマラッカ海峡、スンダ海峡、ロンボク海峡の3海峡を封鎖し、中国に向かうタンカーや貨物船を監視します」 その狙いは、中東地域から中国に輸送される原油の供給を止める―つまり、海軍や空軍の命綱である燃料、そして14億人の国民の生活を支えるエネルギーを盾にして、中国に侵攻中止を迫ることだ。 「海峡封鎖に当たっては、最新のAI技術を投入した無人航空機、無人水上艇、無人潜水艇が監視を行ない、軍も含めた中国側の動きを丸裸にするわけです」(飯柴氏) この段階で中国政府が侵攻の中断もしくは中止を余儀なくされることが最善のシナリオだが、そうではなかった場合、いよいよ台湾海峡の「地獄絵図」化が実行に移される。