カセットテープ人気は本物か?メタル再生、デジタル化可能なラジカセも登場
そして最後発のIVが、いわゆるメタルテープだ。酸化されていない鉄合金磁性体を使用、それまでのすべてのタイプを凌駕する圧倒的な性能を誇った。しかしそのぶん、レコーダー側にも高性能が求められ、メタルポジションのないレコーダーでは録音再生が困難だった。そのため、メタルテープに対応した「メタル対応カセットデッキ」などの製品がブームとなった。
すべてのカセットテープのタイプの再生が可能
ハイポジやメタルで録音したテープを持っている人も少なくないわけだが、ノーマルポジションだけのプレイヤーでは、ハイポジやメタルはちゃんとした音で再生することができない。CDX9Nではノーマルポジションのほかにハイポジション(再生のみ)を装備することで、ノーマルテープからメタルテープ(ハイポジションで再生)まで、すべてのタイプの再生に対応したというわけだ。 至れり尽くせりで1万円強というエントリークラスの値段。耐久性などは未知数だが、なんといってもこれだけの便利なモデルが現行製品として出ていることは嬉しい。 東芝エルイートレーディング株式会社商品企画部に話を聞くと、 「カセットテープが使えるラジカセの需要は徐々に減る傾向にあります。一方でカセットテープをご愛用されるニーズもシニア層を中心に根強くあります。想定を上回る需要で、供給が間に合わない商品もあり、ご好評をいただいています」とラジカセ需要に手応えを感じている様子だ。 CDX9Nにハイポジション再生を搭載した狙いについては、「アンケート調査で、お客様がハイポジションテープをまだ大切に保管されていることがわかりました。当時の大切な思い出を、当時の音で再現できるよう対応しました」とのこと。さらに、カセット部分の設計のノウハウなどは昔から受け継がれてきたものを継承しているという。 東芝といえば、オーレックスというオーディオのブランドを持っている。90年代にオーディオ事業をオンキヨー(当時のグループ企業)に譲渡したのを機に、いったんは消滅状態となった。しかし昨年、ハイレゾ音源対応のCDラジオシステム・TY-AH1000で26年ぶりにオーレックスブランドを復活させ、往年のファンを喜ばせた。カセット製品でも、エントリークラスではなく、オーレックスのような高級クラスでの展開の可能性はないのだろうか。その点をズバリ聞くと、「カセットテープに新しさを感じる若者の人気など、新しい需要も期待され、今後もお客様のさまざまなご要望に応えさせていただきます」との回答。当たり前だが、すべては需要があるかないか。今後のカセット人気の動向次第では、可能性がないわけではなさそうだ。 カセット市場では、カセットの筐体(きょうたい)を挟み込むハンディタイプのプレーヤー「Elbow」なども登場している。今後の展開を見守りたい。 (取材・文・写真:志和浩司)