箱根駅伝まで1か月半 “山の神”青学・神野の復活は間にあうのか
晩秋の冷たい風がランナーたちの緊張感を増していく。あと50日もすると92回目の箱根駅伝がやってくる。前回は山上り区間である5区神野大地の爆走で、青山学院大が初の総合優勝に輝いた。しかし、今季は"山の神”の状態がピリッとしない。 11月1日の全日本大学駅伝(以下、全日本)では東洋大が青山学院大を破り、初優勝を飾った。このレースを東洋大の視点から語れば、1区からの“3連続区間賞”と、4~7区の1秒をけずりだすようなラストスパートに勝因があったといえるだろう。東洋大・酒井俊幸監督が「100%以上のレースをしないと勝てないと思っていました」と話すように、鉄紺軍団は100%以上の力を発揮して、V候補を撃破した。 反対に2位に終わった青山学院大は、小さなミスの積み重ねが1分04秒という差になったといえる。そのなかでも、8区を走ったキャプテン神野大地にも敗因の一端があった。正月の箱根駅伝5区で“山の神”と称えられた男は、いかにして伊勢路を駆け抜けたのか。そして、2016年1月2日に再び“山の神”として降臨できるのか。 2年連続で全日本の最長区間(19.7km)であるアンカーに起用された神野だが、ここまでの道のりは昨シーズンと大きく異なる。昨季は春のトラックシーズンから好調で、台風の影響で中止になった出雲駅伝も最長区間のアンカーを走る予定だった。今季は箱根駅伝5区で驚異的な区間記録を樹立した後、2月1日の丸亀ハーフマラソンを1時間1分21秒(日本人学生歴代3位)と快走する。しかし、その直後に左脚大腿骨の疲労骨折が判明した。4月20日から走り始めて順調に回復するが、6月13日の日本学生個人選手権5000m(14分13秒98で12位)に出場した2日後に痛みが出て、今度は右脛の疲労骨折が判明する。再び、走り始めたのは8月6日からで、20分ジョッグからのリスタートだった。 その後、神野は順調にトレーニングを消化。全日本の前日、青山学院大・原晋監督は、「神野は復帰戦ですけど、あえて出雲を外して、練習をやらせてきました。10月3日の学内のタイムトライアルでは5000mで自己ベスト(14分4秒)に近いタイムを出していますし、30km走も4本やっています。調整も順調です」と話していた。そして、「1分差なら神野で逆転できる」と読んでのアンカー起用だった。 実際はどうだったかというと、アンカー神野は27秒前の東洋大・上村和生を追いかける展開だった。原監督のシナリオ通りにレースが進めば、逆転Vとなるところだが、そうはならなかった。神野は最初の5kmを14分41秒で通過した上村に少しずつ引き離され、最終的には1分04秒差まで広げられて、2位でフィニッシュを迎えた。 苦しそうな顔でレースを進めていた神野は、ゴール後に両手を合わせて、「ゴメン」のポーズ。フラフラになり、チームメイトの肩を借りながら、エネルギーゼリーを飲み干した。全日本では、箱根5区で見せたような力強さは見られなかった。レース後、神野は以下のようなコメントを残している。 「昨年は最初の5kmを、暑さのなかでも14分35秒で入っているので、今回は14分50秒では行こうと思っていました。でも、自分のカラダと感覚が合っていなくて、ちょっときついなと思ってしまって。そこであきらめの気持ちが少し出てしまいました。練習は良かったんですけど、走ってわかることもあります。2か月弱の練習で自分的には状態が戻っていると思っていたんですけど、いざ走ってみると動かなくて。練習不足を実感しましたね。また今までにないくらい緊張してしまって、下手なレースはできないなと。周囲の期待に応えなきゃいけないというのも、自分のなかにありました。今季は駅伝3冠を目標にやってきて、自分のせいで負けてしまったので、申し訳ない気持ちでいっぱいです」